SS400・SM490・SN400/SN490 の3つの規格の違い(一般構造用・溶接構造用・建築構造用)を並べた図

SS400・SM490・SN400・SN490 の違い|建築で SN 材を使う理由【鉄骨ファブが解説】


■結論:SS・SM・SNは、用途と規定される性能が違う

SS400・SM490・SN400/SN490 の3つの規格の違い(一般構造用・溶接構造用・建築構造用)を並べた図
同じ「400」「490」でも、規格が保証している中身が違う

鉄骨の図面に出てくる SS400・SM490・SN400・SN490 は、どれも JIS の「圧延鋼材」ですが、規格が違います。

SS400は一般構造用、SM490は溶接構造用、SN400・SN490は建築構造用の圧延鋼材です。化学成分、降伏点、降伏比、靭性、板厚方向特性などの規定が違います。SN材でもA・B・C種を区別し、規格記号の末尾まで確認します。

👉 塑性変形能力や溶接性を求める建築部材では、SN材B・C種などが選ばれます。一方、SS・SMも設計条件に応じて建築に使用されます。材質は部材名だけで決めず、構造設計と設計図書の指定を確認します。

この記事では、記号、化学成分、機械的性質、使い分けを整理します。数値の適用範囲は鋼種・板厚・製品形状・製造条件ごとに異なります。実際の発注・受入れでは、採用規格の版とミルシートを照合してください。


■記号の読み方:頭文字が規格、数字が引張強さ、末尾が品質の種類

SS400・SM490B・SN490C の記号を頭文字・数字・末尾に分解して意味を示した図
SM の B・C は衝撃値の段階、SN の A・B・C は使う場所の区分

記号は3つの部分でできています。

・頭文字:規格の性格。SS=一般構造用(JIS G 3101)、SM=溶接構造用(JIS G 3106)、SN=建築構造用(JIS G 3136)。
・数字:引張強さの下限(N/mm²)。400 なら 400〜510、490 なら 490〜610 N/mm² の範囲に入ることを意味します。
・末尾の A・B・C:品質の種類。ただし SM と SN で意味が違います。

SM 材の A・B・C は衝撃値(靭性)の段階で、A は衝撃試験なし、B は 0℃ で 27J 以上、C は 0℃ で 47J 以上(JIS G 3106:2020 表 8)。SN 材の A・B・C は使う場所の区分で、A は溶接しない部材向け、B は溶接する主要部材向け(降伏点の上限・降伏比・衝撃値あり)、C は B に加えて板厚方向に大きな引張力を受ける部材向け(板厚方向の絞り値を規定)です。

👉 SS400 には A・B・C がありません。衝撃試験も溶接性の規定も無いので、分ける必要がないからです。図面で「SN490B」と「SN490C」を見分けるときは、末尾まで読むことが大切です。


■化学成分の違い:SS は P・S だけ、SM・SN は C・Si・Mn も決まっている

SS400・SM490A/B・SN400B・SN490B/C の化学成分(C・Si・Mn・P・S・炭素当量)の上限を比べた表
SS400にC・Ceqの一律の上限規定はありません。図中の成分数値は鋼種・板厚・製造条件を区別して確認し、SM490のCeqの説明は本文の訂正を参照してください。

溶接のしやすさは、鋼材の化学成分で決まります。炭素(C)とマンガン(Mn)が多いほど強くなりますが、溶接したときに硬くなって割れやすくなります。その目安が炭素当量(Ceq)で、Ceq = C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 で計算します。

SS400はP・Sの上限を規定しますが、CやCeqの上限は規定していません。SM490はC・Si・Mn等を規定し、A・B・C種や板厚・製造条件を区別して確認します。SM490A・Bの通常材に、Ceq上限を一律に「0.38%・0.40%」と対応させるのは誤りです。SN材B・C種はCeqまたは協定によるPCMも確認し、C種は板厚方向特性と厳しいS上限が特徴です。具体的な上限値は、該当する製品規格表と注文条件で照合します。

👉 SN 材は SM 材より P・S の上限が低く(P 0.030・S 0.015)、不純物を減らして靭性と溶接部の健全性を高めています。炭素当量が高い鋼材ほど溶接前の予熱が必要になります(予熱の記事)。


■機械的性質の違い:SN材B・C種の降伏点・降伏比を条件付きで確認

図の降伏点上限・降伏比は、SN材B・C種の対象板厚・製品形状で確認します。SN400Aには同じ規定はありません。
図の降伏点上限・降伏比は、SN材B・C種の対象板厚・製品形状で確認します。SN400Aには同じ規定はありません。

SN材のB・C種には、降伏点・降伏比や溶接性・靭性に関する規定があります。ただし板厚や製品形状で適用条件が異なり、SN400Aに同じ規定はありません。B種の降伏点上限・降伏比は原則板厚12mm以上が対象で、薄いウェブのH形鋼等には例外があります。SN材を使うだけで建物の耐震性が保証されるわけではありません。

強度の例として、板厚12〜40mmのSN400Bの降伏点は235〜355N/mm²、SN490Bは325〜445N/mm²です。ただし製品形状による例外を確認します。引張強さは400級が400〜510N/mm²、490級が490〜610N/mm²。降伏点、設計に使う基準強度F、引張強さを混同しないようにします。衝撃試験も鋼種と対象板厚で適用が異なります。

「強い鋼材ほど良い」と思いがちですが、建築の設計では違います。梁が想定より強すぎると、地震のときに梁ではなく柱が先に壊れてしまうからです。降伏点に上限があるのは「弱すぎない」だけでなく「強すぎない」ことを保証するためです。

👉 例えばSN材B種の降伏点上限・降伏比とシャルピー衝撃試験では、対象板厚の境界が同じとは限りません。降伏点・降伏比は原則12mm以上、シャルピーは12mm超が対象です。H形鋼の形状による例外も含め、規格表の注記まで確認します。


■建築でSN材が選ばれる理由:塑性変形を考慮した材料性能

柱と梁の接合部で梁端が先に降伏する図と、SN 材に求められる3つの性能(想定どおりの強さで降伏・降伏後に粘る・溶接部で壊れない)
梁降伏型の設計は、鋼材が「想定どおりに、粘って」降伏することが前提

鉄骨ラーメン構造では、大地震時に梁端などを計画的に降伏させ、塑性変形でエネルギーを吸収する設計が用いられます。すべての建物が同じ崩壊形式ではありませんが、想定した部位が先に降伏し、接合部が必要な耐力を保つために、材料性能と接合詳細を合わせて検討します。

重要なのは、①降伏点のばらつきを考慮して耐力関係を確保する、②降伏後の変形能力と靭性を確保する、③溶接施工性と接合部の性能を確保することです。板厚方向の大きな引張応力を受ける部位では、C種の厚さ方向特性も確認します。材料規格への適合だけで、溶接割れや脆性破壊が起こらないと保証するものではありません。

SN 材(JIS G 3136)は 1994 年に、こうした建築特有の要求をまとめて規格化したものです。それ以前は SS 材・SM 材を建築にも使っていましたが、いまは建築の主要部材の多くが SN 材で設計されています。

👉 建築基準法 37 条により、構造耐力上主要な部分に使う鋼材は JIS 適合品か国土交通大臣の認定品でなければなりません。角形鋼管柱の BCR295・BCP325 も、SN 材と同じ考え方(降伏点の上限・降伏比・靭性)で作られた建築構造用の鋼管です。


■使い分けの目安:部材ごとに「溶接するか・降伏させるか・板厚方向に引かれるか」

柱・大梁・通しダイアフラム・小梁・二次部材・プレート類ごとに、よく使われる材質(BCR/BCP・SN400B/490B・SN400C/490C・SS400 など)と理由をまとめた表
材質を決めるのは設計者。工場は指定どおりに手配し、ミルシートで証明する

材質は設計者が設計図書(構造図の材料表・特記仕様書)で決めます。鉄骨工場はその指定どおりの鋼材を手配し、ミルシートで規格適合を証明します。一般的な使い分けの目安は次のとおりです。

使い分けの例は、H形鋼の柱・大梁にSN400B・SN490B、角形鋼管柱にBCR295・BCP325などです。C種は、溶接組立箱形断面柱のスキンプレートなど、板厚方向の性能を求める部位に用います。通しダイアフラム・ガセット・ベースプレート等も、応力の方向や溶接条件を踏まえた図面の材質指定に従います。小梁・間柱なども、溶接や塑性化の有無で判断し、部材名だけでA種・SS400とは決めません。

SS400に溶接性の一律の規定がないことと、SS400を建築に使えないことは別です。設計者が必要性能を確認した材質を指定し、工場は勝手に他材質へ置き換えず、指定された規格・板厚と施工条件を確認します。

👉 注意したいのは SN400A です。SN400B と同じ「SN400」でも、A 種は溶接しない部材向けで、降伏点の上限も衝撃値の規定もありません。図面の末尾の A・B・C まで確認して手配します。


■まとめ

  • SS400(JIS G 3101)は引張強さ・降伏点と P・S だけを規定。溶接性・靭性は保証されない
  • SM490(JIS G 3106)は C・Si・Mn を規定し溶接できる。B・C 種は 0℃ で 27J/47J 以上の衝撃値
  • SN材B・C種は、対象板厚・製品形状に応じた降伏点上限・降伏比、溶接性・靭性の規定を持つ。A種と区別する
  • 建築の材料は構造形式・必要な変形能力・溶接条件を踏まえて選ぶ。SN材だけで耐震性が保証されるわけではない
  • 材質は設計図書で決まる。記号は末尾の A・B・C まで読み、ミルシートで規格適合を確認する

■参考にした基準・資料

  • JIS G 3101「一般構造用圧延鋼材」:SS400 の化学成分(P・S)と機械的性質
  • JIS G 3106:2020「溶接構造用圧延鋼材」:表 2 化学成分、表 5 炭素当量、表 7 降伏点・引張強さ・伸び、表 8 シャルピー吸収エネルギー
  • JIS G 3136「建築構造用圧延鋼材」:SN400A・B・C、SN490B・C の化学成分、炭素当量、機械的性質(降伏点の上下限・降伏比・衝撃値・板厚方向の絞り)
  • 日本鉄鋼連盟『わかりやすい建築構造用鋼材 Q&A集 SN材シリーズ編』第3版(2008年2月):SN 材の制定の経緯と A・B・C 種の使い分け
  • 建築基準法 第37条(建築材料の品質):構造耐力上主要な部分に使う鋼材は JIS 適合品または国土交通大臣認定品

■おわりに

この記事は鋼材規格の一般的な説明です。個別の物件で使う材質・板厚・品質の種類は、設計図書と工事監理者の指示が優先します。

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この記事を書いた会社
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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確認資料:JFEスチール「厚板JIS(SS・SM・SN)」/同「建築構造用鋼材の特徴」。鋼種・板厚・製品形状・製造条件ごとの規定を区別して説明を見直しました。(2026年9月28日改訂)