半自動溶接と被覆アーク溶接の全体像の比較図

半自動溶接(CO2/MAG)と被覆アーク溶接の違い|鉄骨工場での使い分け【鉄骨ファブが解説】


■結論:ガスで守るか、被覆で守るかの違い

半自動溶接と被覆アーク溶接の全体像の比較図
ガスで守る半自動と、被覆で守る手溶接

鉄骨の溶接でよく使うのが、半自動溶接(CO2/MAG)と被覆アーク溶接(手溶接)です。大きな違いは、溶けた金属を空気から守る方法です。

半自動はシールドガスで守り、ワイヤを機械が自動で送ります。被覆アークは溶接棒の被覆が溶けてガスとスラグを作り、人が棒を持って溶接します。どちらが上ということはなく、場所と目的で使い分けます。


■半自動溶接(CO2/MAG)とは

半自動溶接の仕組み。ワイヤ自動送給とシールドガス
ワイヤを自動送給し、ガスで守る。工場の主力

半自動溶接は、ワイヤを機械が自動で送り、人はトーチを動かす方式です(だから『半自動』)。溶けた金属はシールドガスで守ります。

シールドガスにはCO2(炭酸ガス)やアルゴン+CO2の混合ガスを使います。CO2も活性ガスなので、広い分類ではCO2溶接もMAG溶接に含まれます。現場で「MAG」を混合ガス溶接の意味で使う場合は、その意味を確認します。風でシールドが乱れると欠陥の原因になるため、防風対策が必要です。


■被覆アーク溶接(手溶接)とは

被覆アーク溶接の仕組み。溶接棒とスラグ
被覆が保護ガスとスラグを作ります。外部のガスボンベは不要ですが、強風や雨への対策は必要です。

被覆アーク溶接は、被覆された溶接棒(手棒)を人が持って行う方式です。棒のまわりの被覆が溶けて、ガスとスラグを作り、溶接部を守ります。

ガスボンベが要らないので、風のある現場や狭い所・姿勢の悪い所に強いのが特長です。溶着は半自動より遅く、溶接後にスラグを取る手間があります。高張力鋼には低水素系の棒を使い、割れを防ぎます(吸湿を避ける乾燥・保管が大事)。


■比べてみる

半自動と被覆アークの比較表(速さ・ガス・風・スラグ・使い所)
比較図の補足:CO2も広い分類ではMAGに含まれます。現場でも、防風対策を整えたガスシールド溶接が使われます。

2つの方式の違いを、表で見比べます。


■鉄骨工場での使い分け

工場は半自動、現場は被覆アークという使い分け
工場は速さの半自動、現場は確実さの手溶接

工場の中は、柱や梁の製作で長い溶接が多く、姿勢も決まっているため、速くて安定した半自動(CO2/MAG)が主力です。ロボット溶接もこの方式です。

現場の柱継手などでも、防風設備を設けたガスシールドアーク溶接は使われます。被覆アークやセルフシールドも選択肢ですが、「屋外だからこの方法」とは決めず、鋼種・姿勢・要求性能と承認された溶接施工要領に従います。


■溶接材料(ワイヤと溶接棒)

図の材料区分は本文で補足・訂正しています。YGW11・YGW18はいずれもCO2用で、ワイヤの規格と指定ガスを照合します。
図の材料区分は本文で補足・訂正しています。YGW11・YGW18はいずれもCO2用で、ワイヤの規格と指定ガスを照合します。

方式に合わせて、使う材料も変わります。

  • 半自動のソリッドワイヤ:YGW11・YGW18はいずれもCO2用。Ar+CO2混合ガス用にはYGW15・YGW19などがあります。JIS分類だけでなく、製品資料の指定ガス・鋼種・入熱/パス間温度条件を確認する
  • フラックス入りワイヤ:中にフラックス。姿勢や外観に強い。セルフシールド型はガス不要
  • 被覆アークの溶接棒:JIS Z 3211。高張力鋼には低水素系。吸湿すると割れの元なので乾燥・保管を管理

■まとめ:場所と目的で選ぶ

半自動と被覆アークの使い分けの3つのポイント
使い分けの3つの目

半自動と被覆アークは、溶接材料の送給方法や溶融金属の保護方法が違います。作業場所だけで優劣を決めず、鋼種・姿勢・施工条件に合う方法と材料を選びます。特にYGW11とYGW18の違いは「CO2用か混合ガス用か」ではありません。

鉄骨の製作・溶接についてのご相談やお見積もりは、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

参考にした基準:日本建築学会 建築工事標準仕様書 JASS 6 鉄骨工事/JIS Z 3312(軟鋼・高張力鋼用のマグ/ミグ溶接ソリッドワイヤ)/JIS Z 3211(被覆アーク溶接棒)/溶接施工要領書(WPS)の考え方。実際は各基準・設計図書に従います。


この記事を書いた会社
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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材料と指定ガス:神戸製鋼所「建築鉄骨用溶接材料」/同「自動車・車両」溶接材料一覧。(2026年9月28日改訂)

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