■結論:資格は「作る・管理する・見る・運ぶ」の4つの働きに対応する

鉄骨製作に関わる資格は、ひとくくりに「鉄骨の資格」と言われることがありますが、実際は仕事の役割ごとに別の資格があります。働きで分けると、①作る(溶接)・②管理する(計画・品質管理)・③見る(検査)・④運ぶ(玉掛け・クレーン)の4つに整理できます。
- ①作る:溶接技能者(JIS Z 3841/JIS Z 3801、建築鉄骨向けのAW検定)
- ②管理する:製作管理技術者・溶接管理技術者・工作図管理技術者
- ③見る:製品検査技術者・超音波検査技術者
- ④運ぶ:玉掛け・クレーン運転の技能講習・特別教育・運転免許
👉 これらは別々の資格で、一人がすべてを兼ねるものではありません。鉄骨工場の品質と安全は、役割ごとに資格を持つ人が分担することで保たれています。
この記事では、4つの働きごとに資格の種類を一覧にし、工場のグレード(J・R・M・H・S)との関係、資格を切らさないための管理までまとめます。個々の資格の詳しい内容は、それぞれの専門記事にリンクしています。
■作る人の資格:溶接技能者(JIS Z 3841/JIS Z 3801)とAW検定

実際に溶接する溶接技能者の資格は、半自動溶接ならJIS Z 3841、手溶接ならJIS Z 3801の技術検定に合格し、日本溶接協会から適格性証明書を受けたものです。記号(SA-3H など)は、溶接方法・裏当ての有無・板厚・姿勢を表します。
- 建築鉄骨の溶接は、溶接方法・板厚・継手・姿勢など実際の作業条件に対応する資格が必要です。下向姿勢の F は基本級、横向・立向などの H・V は対応する基本級を前提とする専門級です
受験資格は、基本級(2F など)が「1か月以上溶接を習得した15歳以上」、専門級(3F・3H など)が「3か月以上習得し、対応する基本級を持つ人」です。試験は学科と実技で、実技は外観試験と曲げ試験で判定されます。
さらに、建築鉄骨に特化した技量付加試験としてAW検定(建築鉄骨溶接技量検定)があります。資格の有効期間や更新方法は資格種別・適用規定によって異なるため、AW検定協会の最新規定を確認します。特記仕様書で「AW検定合格者は技量付加試験を原則免除する」とされることがありますが、適用の可否は工事ごとの設計図書・監理者の確認が必要です。
資格記号の詳しい読み方とグレード別の必要資格は溶接技能者の資格にまとめています。
■管理する人の資格:製作管理技術者・溶接管理技術者・工作図管理技術者

溶接技能者とは別に、工程や品質を計画・管理する資格があります。鉄骨製作工場の性能評価基準では、工場のグレードに応じてこれらの管理技術者を正社員として置くことが求められます。
- 製作管理技術者:工作図・製作全体の管理(鉄骨製作管理技術者 又は 建築士)
- 溶接管理技術者:溶接条件の管理・溶接工の指導(溶接管理技術者〈WES 8103〉 又は 鉄骨製作管理技術者)
- 工作図管理技術者:工作図(製作図)の管理(建築士 又は 鉄骨製作管理技術者)
👉 「計画・管理する人」と「実際に溶接する人(技能者)」は別の資格です。一人が複数の資格を持つこともありますが、役割としては分けて置きます。外注管理責任者・材料管理責任者のように、資格は不要で他の管理技術者が兼務できる役割もあります。
■見る人の資格:製品検査技術者・超音波検査技術者

できた製品や溶接を確かめるのが検査技術者の役割です。溶接技能者(作る人)とは別の資格として位置づけられています。
- 製品検査技術者:寸法・精度(製品検査)を基準どおりに測り、記録(成績書)をまとめる
- 超音波検査技術者:完全溶込み溶接の内部を超音波探傷検査(UT)で確かめる。資格の道は建築鉄骨超音波検査技術者、または JIS Z 2305 の UT レベル2以上
いずれも工場のグレードに応じて正社員として配置することが求められます。製品検査管理技術者は超音波検査管理技術者との兼務が認められる場合もあります。詳しい役割と溶接管理技術者との関係は建築鉄骨の検査技術者資格にまとめています。
■運ぶ人の資格:玉掛けとクレーン運転

鋼材や組み上がった部材をクレーンで吊って運ぶ作業には、玉掛けとクレーン運転、それぞれに資格が要ります。区分の基準は、実際に吊る荷物の重さではなく機械のつり上げ荷重です。
- 玉掛け:つり上げ荷重1トン以上は玉掛け技能講習、1トン未満は特別教育
- クレーン運転(移動式クレーン・床上操作式を除く):5トン以上は原則クレーン・デリック運転士免許、0.5トン以上5トン未満は特別教育、0.5トン未満はクレーン等安全規則の適用対象外
- 床上操作式クレーンには別の技能講習区分がある
玉掛け技能講習や床上操作式クレーン運転技能講習は、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関で実施されます。一方、特別教育は事業者が自ら行う、または外部に委託して行うことができ、所定の科目を修了すれば足ります。
👉 免許・技能講習・特別教育は法律上の区分です。設備のつり上げ荷重と操作方式を確認して、対象業務にあう資格の持ち主が担当します。詳しい流れは玉掛けとクレーン運転の講習にまとめています。
■資格と工場のグレード(J・R・M・H・S)の関係

鉄骨製作工場の性能評価基準では、工場のグレード(J・R・M・H・S)によって、要る溶接技能者の資格や、管理・検査の技術者の体制が変わります。
- J:半自動溶接は SA-2F、手溶接は A-2F。横向姿勢を用いる場合は、それぞれ対応する 2H も必要
- R:半自動溶接は SA-3F、手溶接は A-3F。横向姿勢を用いる場合は、それぞれ対応する 3H も必要
- M:SA-3F + SA-3H、または A-3F + A-3H。管理・検査の技術者を基準に沿って配置
- H:SA-3F・SA-3H・SA-3V、または A-3F・A-3H・A-3V
- S:固定した一組の資格記号だけで表せず、工場が定める施工条件に対して、溶接方法・鋼種・板厚・姿勢などに対応する資格を確認
グレードは「工場」に、資格は「人」に付きます。工場は、こうした資格者を含む体制・設備・実績で評価されます。例えば M グレードが求める最低限は、溶接技能者については「有資格の正社員が1名」ですが、実際に必要な人数は、その工場が扱う板厚・姿勢・工程を有資格者で回せるだけ要ります。
グレード区分の詳しい内容は鉄骨のグレードとは、実際の見学での確認ポイントは鉄骨工場見学で見るべきポイントを参照してください。
■資格を切らさないための管理:名簿・期限・配置

資格は取得して終わりではなく、有効期限の管理と配置の記録が欠かせません。
- 有資格者の名簿(保有資格・取得日・有効期限)を作る
- 有効期間のある資格(技能検定の適格性証明書、AW検定など)は、更新の時期を台帳で管理する
- 工事ごとに、板厚・姿勢・業務に応じた資格者を配置する
- 溶接施工要領書・作業計画書に、担当者の氏名と資格を記載する
- 技能講習・特別教育の修了を証明する記録(修了証・受講記録)は、本人と会社の双方で保管する
👉 有効期限が切れた資格は、その資格を必要とする認定・仕様上の作業には使用できません。技能講習など有効期限のない修了資格もあるため、資格ごとに更新の要否を確認します。資格の期限と適用範囲の管理は、品質管理・安全管理の重要な一部です。
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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👉 建築鉄骨の検査技術者資格|製品検査技術者・超音波検査技術者
👉 玉掛けとクレーン運転の講習|鉄骨工場で最初に受ける安全の資格
■参考にした基準・資料
この記事は一般的な鉄骨製作工場の資格制度をもとに整理したものです。個別の物件は設計図書と監理者の指示が優先します。
- 日本溶接協会「半自動溶接」:JIS Z 3841 に基づく資格区分・受験条件
- 全国鉄骨評価機構「鉄骨製作工場の性能評価基準(全グレード)」:J・R・M・H・S の適用範囲と品質管理体制
- 日本溶接協会「溶接管理技術者」:WES 8103 に基づく資格認証
- 日本非破壊検査協会「技術者資格」:JIS Z 2305 に基づく非破壊試験技術者認証
- 日本建設業連合会「鉄骨工事Q&A」A-3-18、AW検定協会:AW検定の位置付けと最新規定
- 厚生労働省「クレーン等安全規則」:玉掛け・クレーン運転の資格区分
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト:就業制限」:免許・技能講習を要する業務
資格の呼称・区分・有効期間は、制度の改定で変わることがあります。工事ごとの要件は、特記仕様書・工事監理者の確認が優先します。
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