BCR295 と BCP325 の違いを並べた比較図。成形方法・降伏点・寸法範囲・角部の曲率半径

角形鋼管(コラム)BCR295・BCP325 の違い|ロール成形とプレス成形【鉄骨ファブが解説】


■結論:作り方と強さの等級が違う。サイズと納期で選ぶ

BCR295 と BCP325 の違いを並べた比較図。成形方法・降伏点・寸法範囲・角部の曲率半径
BCR295 と BCP325 の主な違い(出典:日本鉄鋼連盟 製品規定 MDCR0002-2017・MDCR0003-2017)

建築の柱に使う角形鋼管(現場では「コラム」と呼ばれます)には、BCR295 と BCP235・BCP325 があります。違いをひとことで言うと、BCR は鋼帯を連続的に丸めてから角形にする「冷間ロール成形」、BCP は鋼板をプレスで曲げて溶接する「冷間プレス成形」です。記号の BC は Box Column(ボックスコラム)、R は Roll、P は Press の頭文字です。

続く数字は降伏点の下限(N/mm²)に対応します。BCR295 は降伏点 295N/mm² 以上、BCP325 は 325N/mm² 以上、BCP235 は 235N/mm² 以上です。設計で使う基準強度 F の値は、材料ごとに告示または大臣認定で定められます。

どちらも JIS ではなく、一般社団法人日本鉄鋼連盟の製品規定(BCR295 は MDCR0002、BCP235・BCP325 は MDCR0003)にもとづく国土交通大臣認定品です。素材の考え方は SN 材(JIS G 3136 建築構造用圧延鋼材)がもとになっていて、JIS G 3466 の STKR400・STKR490 とは規格そのものが違います。

👉 実務では「どちらが優れているか」ではなく、柱のサイズ・板厚・納期で決まります。BCR は 550mm×25mm まで、BCP は 1000mm×40mm まで。BCR は在庫販売、BCP は受注生産が基本です。


■作り方の違い|ロール成形は「丸めてから角へ」、プレス成形は「板を曲げて溶接」

ロール成形とプレス成形の製造工程の違いを示した図。溶接線(シーム)の位置も示す
ロール成形とプレス成形の流れと、溶接線(シーム)の位置

BCR295(ロール成形)は、コイル状の鋼帯をロールで連続的に丸め、電気抵抗溶接で管にしたあと、そのまま連続して角形断面に成形します。溶接線(シーム)は 1 本です。製品規定でも「冷間ロール成形設備によって、鋼帯から電気抵抗溶接によって製造される溶接鋼管を、連続的に角形断面に成形して製造される角形鋼管」と定義されています。

BCP235・BCP325(プレス成形)は、鋼板をプレスで曲げて角形断面(1 シーム)または一対の溝形断面(2 シーム)にし、継目を半自動溶接または自動アーク溶接でつなぎます。曲げるのは角の部分だけで、平板部は板のまま残ります。

この違いは、工場での柱の製作にそのまま効いてきます。シーム(鋼管自身の溶接線)とダイアフラムの溶接線が重ならないように、切断のときに向きを決めておく必要があります。2 シームの材料なら、シームは向かい合う 2 か所に来ます。

なお、どちらも「冷間」で加工します。冷間で塑性加工を受けると、一般の鋼材では時間とともに硬く脆くなる時効硬化が起きやすく、これは窒素量が多いほど顕著になります。BCR・BCP の製品規定で化学成分の主要 5 元素に加えて窒素(N)を 0.006%以下に制限しているのは、このためです。


■強さの規定の違い|降伏点の上限、降伏比、炭素当量

BCR295・BCP235・BCP325 の降伏点・引張強さ・降伏比・伸び・シャルピー・炭素当量の比較表
機械的性質と炭素当量の比較(出典:MDCR0002-2017 表2〜表6、MDCR0003-2017 表2〜表6)

製品規定で決まっている値を並べると、次のようになります。BCR295 は降伏点または耐力 295N/mm² 以上(厚さ 12mm 以上では 445N/mm² 以下)、引張強さ 400〜550N/mm²。BCP325 は降伏点 325N/mm² 以上(厚さ 12〜16mm では 445N/mm² 以下)、引張強さ 490〜610N/mm²。BCP235 は降伏点 235N/mm² 以上(厚さ 12〜16mm では 355N/mm² 以下)、引張強さ 400〜510N/mm² です。

注目したいのは上限が決まっていることです。強ければよいのではなく、実際の降伏点がばらつくと、地震のときに「はりより先に柱が壊れない」という設計の前提が崩れます。降伏比(降伏点÷引張強さ)の上限も規定されていて、BCR295 は 90%以下、BCP235・BCP325 は 80%以下です(いずれも厚さ 12mm 以上の範囲)。

ねばりの確認として、厚さ 12mm を超える材はシャルピー吸収エネルギー 0℃で 27J 以上(3 個の平均、V ノッチ・圧延方向、溶接部を含まない平板部)が規定されています。これは BCR295・BCP235・BCP325 とも同じです。

溶接する側から見ると、炭素当量の違いが効きます。BCR295 と BCP235 は 0.36%以下、BCP325 だけ 0.44%以下です(溶接割れ感受性組成 PCM は順に 0.26%・0.26%・0.29%以下)。同じ板厚でも鋼種が変われば予熱の考え方は変わります。予熱の要否は、予熱はいつ必要?で扱ったとおり、鋼種・板厚・気温・溶接方法から判断します。


■寸法の範囲の違い|BCR は 550×25 まで、BCP は 1000×40 まで

辺の長さと厚さで見た BCR295 と BCP の製造範囲を重ねた図
規定されている寸法の範囲(出典:MDCR0002-2017 表1 備考2、MDCR0003-2017 表1 備考2)

製品規定が対象としている寸法は、BCR295 が 辺の長さ×厚さ = 150×6mm 〜 550×25mm、BCP235・BCP325 が 200×6mm 〜 1000×40mm です。長方形断面の場合は、辺の長さの平均値と厚さがこの範囲に入るものが対象になります。

もうひとつ、辺の長さ/厚さ に下限があります。BCR295 は 12.5 以上、BCP は 13.1 以上(テーパー管を除く)。つまり「小さいのに極端に厚い」断面は、この規格の対象から外れます。

ここで注意したいのが、規定の範囲と、実際に各メーカーが作れる範囲は別だということです。日本鉄鋼連盟が 2025 年 8 月に出している製品寸法の資料では、実際の製造範囲の目安として BCR が 150mm×6mm 〜 550mm×25mm、BCP が 350mm×12mm 〜 1000mm×40mm と案内されています。具体的な製造可能範囲は、メーカーごとに確認が必要です。

👉 拾いの段階で □-550×25 を超える柱が出てきたら、材料は BCP 側になると考えて、早めに手配の相談をしておくと工程が安全です。BCR は在庫販売が基本ですが、BCP は受注生産が基本で、納期の押さえ方が変わります。


■角部の R が違う|BCR は 2.5t、BCP は 3.5t

同じ□-400×22 でも BCR は R=55mm、BCP は R=77mm になることを示す断面図
角部外側の曲率半径の標準値(出典:MDCR0002-2017 表8、MDCR0003-2017 表8)

図面には出てこないのに、工場では毎回効いてくるのが角部外側の曲率半径(R)です。標準値は BCR295 が 2.5t、BCP が 3.5t(t は厚さ)。許容差は BCR が ±0.5t(厚さ 6〜25mm)、BCP が ±0.5t(6〜19mm)・±0.4t(19mm を超え 40mm 以下)です。

たとえば同じ □-400×22 でも、BCR なら R は 55mm、BCP なら 77mm。22mm も違います。ダイアフラムの外形、スカラップ、裏当て金の納まりは、この R を見て決めるものなので、BCR 用の現寸をそのまま BCP に流用すると合いません。

角部は冷間で加工を受けた部分です。日本鉄鋼連盟の Q&A でも、角部の性能は素材の化学成分・機械的性質を特別に規定し、加工の際の角部の加工度も規定することで安定させている、と説明されています。原則として角部(R 部)に溶接をかけない割り付けにするのは、このためです(内ダイアフラムの溶接も、R 部にかからない位置とするのが原則です)。

なお、角部の靭性まで保証した BCP325T(建築構造用高性能冷間プレス成形角形鋼管)という材料もあります。こちらは別の製品規定(MDCR0012)で定められています。柱の製作手順そのものは、柱の製作手順|角形鋼管・ダイアフラム・仕口にまとめています。


■STKR(JIS G 3466)との違い|規格の目的が違う

STKR400・STKR490 と BCR295・BCP の規格・降伏点上限・降伏比・シャルピーの比較表
STKR と BCR・BCP の比較(出典:日本鉄鋼連盟 Q&A 集 2019年7月 Q1-15 ほか)

同じ角形鋼管でも、STKR400・STKR490 は JIS G 3466『一般構造用角形鋼管』で、一般構造用の規格です。JIS の規格上、降伏点の上限・降伏比・シャルピー吸収エネルギー・溶接性(炭素当量など)の規定はありません。建築の主要構造部に使えないという意味ではなく、性能に則した設計をすることが前提になります。

一方の BCR・BCP は、建築の柱に使うことを前提に SN 材をもとにして作られた規格で、降伏点の上限・降伏比・シャルピー・炭素当量まで決まっています。SN 材の種別でいうと、BCR は B 種相当、BCP には B 種・C 種に相当するものがあります(A 種は該当する使用部位がほとんどないため規格化されていません)。

設計上の扱いについては、冷間成形角形鋼管を柱に用いる場合、STKR・BCR・BCP いずれも告示にもとづく付加的な検討が必要です(板厚 6mm 以上の JIS 材または大臣認定材が対象)。ルート 1 では地震時の柱応力の割増し、ルート 2 では柱はり耐力比 1.5 以上、ルート 3 では柱パネル耐力比 1.3 以上または柱はり耐力比 1.5 以上の確認、といった内容です。BCR・BCP を使う場合は STKR に比べて有利な設計条件が規定されています。どの係数を使うかは構造設計者の判断で、工場が決めるものではありません。

また、冷間成形角形鋼管の適用範囲は「柱材」です。筋かい材やトラス材に使う場合は、別の考え方(構造関係技術基準解説書にもとづく設計)になります。


■工場で見るところ|受入れの照合から柱の製作まで

受入れ照合・寸法許容差・柱製作の注意点をまとめた図
受入れから柱の製作までの確認どころ

受入れでは、製品 1 本ごとに貼られるラベルやマーキングで、製造会社・製品番号・商品名・種類の記号・寸法を確認します。BCR は全長にわたって等間隔でミルマークが印字されるため、切断したあとでも品種とメーカーが分かります。ミルシートは製品番号を起点に製造履歴まで追えます(ミルシートの見方)。

寸法の許容差は BCR・BCP で共通の項目が多く、辺の長さは ±1.0% かつ ±3.0mm、各辺の平板部分の凹凸は辺の長さの 0.5%以下 かつ 3mm 以下、隣り合った平板部分のなす角度は ±1.0°、曲がりは製品長さ 9m 未満で全長の 1/1500 以下(9m 以上で 1/1250 以下)。厚さは 6mm 以上 16mm 未満で −0.3mm 〜 +1.0mm などと決まっています。測る位置は、両端からそれぞれ 50mm を除いた任意の点です。

柱の製作では、①角部(R 部)に溶接をかけない割り付け、②シームとダイアフラムの溶接線を重ねない、③BCR と BCP で R が違うのでダイアフラムの現寸を流用しない、④炭素当量の違いを踏まえた予熱の判断、⑤溶接部の食い違い・アンダーカット・余盛不足の確認、が基本です。通しダイアフラムの板厚の考え方は通しダイアフラムの板厚はなぜ梁より厚い?にまとめています。

👉 図面に「BCR295」と書いてあるものを、在庫の都合で BCP に、あるいはその逆に替えることはできません。材料の記号は設計の前提そのものなので、変更が必要なときは質疑で設計者・監理者の承諾を得ます。


■まとめ

  • BCR295 = 冷間ロール成形。鋼帯を電気抵抗溶接して連続的に角形へ。シームは 1 本
  • BCP235・BCP325 = 冷間プレス成形。鋼板を曲げてアーク溶接。1 シームまたは 2 シーム
  • 記号の数字は降伏点の下限(N/mm²)。降伏点は上限も規定され、降伏比は BCR 90%以下・BCP 80%以下
  • シャルピーは厚さ 12mm 超で 0℃ 27J 以上(共通)。炭素当量は BCP325 だけ 0.44%以下
  • 寸法は BCR が 150×6 〜 550×25mm、BCP が 200×6 〜 1000×40mm。辺の長さ/厚さ の下限もある
  • 角部外側の曲率半径は BCR 2.5t、BCP 3.5t。ダイアフラムの納まり・現寸に直接効く
  • どちらも SN 材がもとの大臣認定品で、JIS の STKR とは規格が別。材料の記号は勝手に替えられない

■参考にした基準・資料

  • 一般社団法人 日本鉄鋼連盟 製品規定『MDCR0002-2017 建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(BCR295)』:2. 種類及び記号(製造方法・寸法の範囲・辺の長さ/厚さ 12.5 以上)、表2 化学成分、表3 炭素当量、表4 溶接割れ感受性組成、表5 降伏点又は耐力・引張強さ・降伏比・伸び、表6 シャルピー吸収エネルギー、表7 寸法許容差、表8 角部外側の曲率半径標準値及び寸法許容差
  • 一般社団法人 日本鉄鋼連盟 製品規定『MDCR0003-2017 建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP235,BCP325)』:同じ構成の各表(成形方法とシーム数、寸法の範囲、化学成分の素材区分 SN400B/C・SN490B/C、炭素当量 0.36%・0.44%以下、角部外側の曲率半径 3.5t)
  • 一般社団法人 日本鉄鋼連盟 ボックスコラム委員会『建築構造用冷間成形角形鋼管 BCR, BCP』2025 年 8 月版:〔1〕BCR・BCP とは(SN 材ベース・大臣認定品・記号の由来)、〔5〕告示の設計法(ルート 1〜3 の付加事項)、〔6〕識別と品質保証、〔7〕製品寸法、〔8〕流通(BCR は在庫販売・BCP は受注生産)、製品寸法概要の図
  • 一般社団法人 日本鉄鋼連盟 ボックスコラム委員会『冷間成形角形鋼管「Q&A」集』2019 年 7 月:Q1-8(角部の性能の考え方)、Q1-9(SN 材の A・B・C 種との対応)、Q1-11(窒素を規定する理由=時効硬化)、Q1-15(STKR の規格上の位置づけ)、Q2-24(柱材以外に使う場合)
  • JIS G 3466『一般構造用角形鋼管』(STKR400・STKR490)、JIS G 3136『建築構造用圧延鋼材』(SN 材):規格の位置づけの比較に用いました
  • 基準強度 F の値、および設計ルートごとの具体的な係数は、告示・大臣認定および『建築物の構造関係技術基準解説書』『冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル』によります。本文では数値を断定せず、考え方のみを記載しています。個別の設計値は構造設計者にご確認ください

■おわりに

ここで書いた内容は、日本鉄鋼連盟の製品規定と公開資料にもとづく一般論です。物件ごとの材料の選定・設計ルート・接合部の仕様は設計図書と監理者の指示が優先し、鉄骨工場は指定された記号の材料をミルシートで照合して製作します。材料の記号を替える判断は、設計者・監理者の承諾が必要です。

当社は建築鉄骨の製作で、角形鋼管柱の材料手配・切断・開先・ダイアフラムの組立・溶接・検査まで社内で管理しています。柱の製作範囲や納期を含めたご相談・お見積もりはお問い合わせからどうぞ。ご相談いただける製作案件の範囲はこちら、鋼材の寸法の読み方はH形鋼の寸法の読み方もあわせてご覧ください。


この記事を書いた会社
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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