錆びてはいけない物、一様に錆びさせる面、錆を落としてから使う面の3つに分けた図

鋼材の保管と錆|屋外保管の注意点【鉄骨ファブが解説】


■結論:錆は「どこに・どれだけ」出たかで扱いが変わる

錆びてはいけない物、一様に錆びさせる面、錆を落としてから使う面の3つに分けた図
錆には「困る錆」と「必要な錆」がある

鉄骨工場の鋼材置き場は、多くが屋外です。黒皮(ミルスケール)の付いた鋼材も、置いておけば少しずつ錆びていきます。

ただ、鉄骨製作で気をつけるべきなのは「錆びること」そのものより、どこに・どれだけ錆が出たかです。大きく 3 つに分けて考えます。

  • 錆びてはいけないもの:高力ボルトのセット、溶接ワイヤ・溶接棒、これから溶接する面、アンカーボルトのねじ部
  • あえて一様に錆びさせる面:高力ボルトの摩擦面(ブラスト処理をしない場合)
  • 錆を落としてから使う面:鋼材の母材面。溶接や塗装の前に錆を取り除く

👉 保管の工夫は、濡らさない・水を溜めない・汚さない・識別を消さないの 4 つに集約できます。この記事では、錆の進み方、屋外保管の基本、摩擦面、ボルトと溶接材料、錆びてしまったときの手当てを順に整理します。


■錆の進み方:A・B・C・D の4段階

錆の等級 A・B・C・D の状態を模式的に並べた図
等級は代表写真と見比べて判定する

鋼材の錆の程度は、国際規格 ISO 8501-1 で A・B・C・D の 4 段階に分けられています。JIS Z 0313 にも同じ区分の表があり、ISO 8501-1 の代表写真と見比べて評価することになっています。

  • A:固着した黒皮(ミルスケール)で大部分が覆われ、錆はほとんどない
  • B:錆が出始め、黒皮がはがれ始めている
  • C:黒皮が錆で消えたか、かき落とせる状態。肉眼でわずかな孔食(点状のくぼみ)が見える
  • D:黒皮が錆で消え、肉眼で全面に孔食が見える

ISO 8501-1 の序文には、この 4 段階が未塗装のまま置かれた鋼材や、在庫として保管中の鋼材によく見られる状態だと書かれています。つまり、置き場の鋼材の話そのものです。

👉 屋外保管が長引くほど A → B → C と進みます。孔食が出ると、錆を落としてもくぼみは残ります。錆を「落とせば済む」うちに加工に回すことが、いちばんの対策です。入荷から加工までの流れは鋼材の発注から入荷までにまとめています。


■屋外保管の基本:濡らさない・溜めない・汚さない・識別を消さない

まくら木の上に鋼材を積み、段ごとに受け木を入れた置き方の模式図と注意点
地面から離し、水が溜まらない置き方に

公共建築工事標準仕様書は、搬入した材料を「工事に使うまで破損や変質がないよう保管する」としています(1.4.6)。具体的な置き方までは書かれていないので、ここからは実務の考え方です。

業界団体の教材(広島県鉄構工業会 青年部会「建築鉄骨の基本」)でも、鋼材は泥・油・ペンキで汚したり、水や酸で錆びさせたりしないよう注意し、山積みにするときは無理な力で変形させないことが基本とされています。

  • 濡らさない:まくら木などで地面から離し、水はけのよい所に置く
  • 溜めない:溝形鋼・山形鋼などは、雨水が溜まる向きで置かない
  • 汚さない:泥・油・ペンキを付けない。油は溶接にも塗装にも障る
  • つぶさない:段ごとに受け木を入れ、無理な力がかからない積み方にする
  • 識別を消さない:鋼種・溶鋼番号などの表示が読める向きで置き、切断前に管理番号へ移す
  • 長く置かない:必要な時期に入荷させ、置き場の滞留を短くする

👉 識別の表示は、雨ざらしで読めなくなることがあります。表示とミルシートの溶鋼番号がつながらなくなると、材料を後から追えません(ミルシートの見方)。錆対策と識別の管理は、置き場では同じ仕事です。


■高力ボルトの摩擦面:あえて「一様に錆を発生させる」面

高力ボルト摩擦接合の添え板と母材の接する面を示した模式図と、摩擦面の規定をまとめた表
摩擦面だけは錆が必要な状態になる

高力ボルトの摩擦接合は、ボルトを強く締めて板どうしを押しつけ、接した面の摩擦で力を伝えるつなぎ方です。黒皮のままや塗装した面では滑りやすいため、この面だけは扱いが逆になります。

  • 公共建築工事標準仕様書 7.4.2:すべり係数値 0.45 以上を確保できるよう、①摩擦面の全面で黒皮を除去したあと一様に錆を発生させる、または ②ショットブラスト・グリッドブラストで表面粗度 50μmRz 以上にする
  • 建設省告示第1464号:炭素鋼の摩擦面は、黒皮等を除去した後に自然放置して表面に赤さびが発生した状態、またはブラスト処理などでこれと同等以上のすべり係数を持つ状態とする
  • 標準仕様書 7.4.6:摩擦面に浮き錆が出た場合や、油・塗料・じんあい等が付いた場合は、組立の前に取り除く

このため、錆止め塗装も摩擦面には塗りません。標準仕様書 7.8.2 では、摩擦面のほか、コンクリートに密着する部分・埋め込まれる部分、密閉される閉鎖形断面の内面なども塗装しない範囲とされています(錆止め塗装の種類と膜厚)。

👉 摩擦面は「錆びていればよい」のではありません。一様に錆びていて、浮き錆・油・塗料が無いことが条件です。置き場で他の部材の油や泥が付かないようにするのも、保管の仕事です。


■高力ボルトと溶接材料:濡れたら「乾かして使う」はしない

高力ボルトと溶接材料の保管の注意点を2つに分けて並べた図
ボルトの錆は締付け力の保証の問題

鋼材より神経を使うのが、高力ボルトと溶接材料です。

  • 高力ボルト:未開封の状態で搬入し、使用直前に包装を開封する。開封して使わなかったセットは、包装し直して保管する(標準仕様書 7.4.4)
  • 高力ボルト協会の Q&A では、保管場所の条件として雨水・夜露による濡れ、錆の発生、ほこりや砂の付着を防げることを挙げ、水に濡れたボルトはそのまま使わない、保管中に錆びたボルトは使えない、としている
  • 溶接材料:被覆剤のはく脱・汚損・変質・吸湿・錆等のあるものは使わない。吸湿の疑いがあるものは、種類に応じた条件で乾燥してから使う(標準仕様書 7.6.4)

なぜボルトの錆がいけないのか。トルシア形高力ボルト(JSS Ⅱ 09 に適合し、大臣認定を受けたもの)は、決まったトルクでピンテールが破断する仕組みです。締める力と入る張力の関係はトルク係数値で決まり、これはねじ面や座面の状態に左右されます。濡れたり錆びたりしてトルク係数値が変わると、ピンテールは切れても、必要な張力が入っていないおそれがあります。

日建連の鉄骨工事 Q&A でも、保管中に濡れたおそれのあるボルトは、乾かしても使わないとしています。締付けの手順は高力ボルトの締付けを、溶接ワイヤの種類は溶接ワイヤ YGW11 と YGW18 の違いを参照してください。


■錆びてしまったら:使う前に何をするか

溶接前・摩擦面・現場溶接部・塗装面・アンカーボルトの場面ごとに、錆への対応と標準仕様書の条番号をまとめた表
場面ごとに、することが決まっている

鋼材に錆が出ても、軽いものは落としてから使えます。公共建築工事標準仕様書では、場面ごとに次のように決められています。

  • 溶接の前:溶接部の水分・油・スラグ・塗料・錆・溶融亜鉛めっき等を取り除く(7.6.6)
  • 母材が雨や雪で濡れているとき:溶接しない(措置を講じる場合を除く)(7.6.8)
  • 摩擦面に浮き錆:組立の前に取り除く(7.4.6)
  • 現場で溶接する部分:溶接に支障となる錆が出るおそれがあれば、溶接に支障のない防錆措置をとる。現場溶接部の両側それぞれ 100mm 程度と超音波探傷の支障となる範囲は、UT が終わってから塗る(7.8.2)
  • 現場で錆が出た塗装面:旧塗膜を除去し、C種の素地ごしらえ(ディスクサンダー・スクレーパー・ワイヤブラシ・研磨紙などで錆を落とす)をしてから補修する(7.8.3・表18.2.2)
  • アンカーボルト:ねじ部の損傷・錆・汚損を防ぐため、布やビニルテープ等を巻いて養生する(7.10.3)

👉 ただし、錆びた高力ボルトは「落として使う」ことができません。孔食まで進んだ鋼材の扱いは、設計図書と監理者の判断によります。錆を落として済むうちに使う、という段取りがいちばん確実です。


■保管でつまずきやすいところ

  • 入荷が早すぎて、置き場で長く雨ざらしになる
  • まくら木を入れずに地面へ直置きし、下の段がいつも湿っている
  • 溝形鋼を雨水が溜まる向きで置いている
  • 高力ボルトの箱を開けたまま、置き場や現場に出しっぱなしにする
  • 摩擦面に油や泥が付いたまま組み立てる
  • 雨ざらしで表示が読めなくなり、どの材料がどのロットか追えなくなる

どれも「錆びたから困る」より前に、置き方と段取りで防げることです。


■まとめ

  • 鋼材は屋外に置けば錆びる。問題は、錆びてはいけない物・面が錆びること
  • 錆の程度は ISO 8501-1 の A・B・C・D。孔食(C・D)が出ると、錆を落としても跡が残る
  • 材料は「使うまで破損や変質がないよう保管する」(標準仕様書 1.4.6)
  • 置き方は、濡らさない・溜めない・汚さない・識別を消さない
  • 高力ボルトの摩擦面は、黒皮を除いて一様に錆を発生させる(またはブラスト処理)。すべり係数値 0.45 以上
  • 摩擦面の浮き錆・油・塗料は組立前に取り除く。摩擦面は塗装しない
  • 高力ボルトは未開封で搬入し、使用直前に開封。濡れた・錆びたボルトは使わない
  • 溶接材料は吸湿・錆のあるものを使わない。溶接前には錆・水分・油を除く
  • 錆びてしまったら、場面ごとの手当てを標準仕様書で確認する

■参考にした基準・資料

この記事の数値と用語は、次の基準・資料にもとづいています。物件ごとの仕様は、設計図書と監理者の指示が優先します。

  • 国土交通省『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版』:1.4.6(材料の保管)、7.2.2(高力ボルトの種類。トルシア形は JSS Ⅱ 09)、7.4.2(摩擦面の性能及び処理)、7.4.4(高力ボルトのセットの取扱い)、7.4.6(組立)、7.6.4(溶接材料)、7.6.6(溶接部の清掃)、7.6.8(溶接作業の条件)、7.8.2(塗装の範囲)、7.8.3(工事現場塗装)、7.10.3(アンカーボルト)、表18.2.2(素地ごしらえ)
  • 建設省告示第1464号(平成12年)一 ロ(1):摩擦面の状態
  • ISO 8501-1:1988 3章(錆の等級 A〜D)、JIS Z 0313 表1
  • 高力ボルト協会『高力ボルトのQ&A』施工編 Q16(保管)・Q21(水に濡れたボルト)・Q35(錆びたボルト)
  • 日本建設業連合会『鉄骨工事Q&A』B-2-13(降雨時)
  • 広島県鉄構工業会 青年部会『建築鉄骨の基本』2-2 材料の保管
  • 置き方の注意(まくら木・置く向き・入荷時期)は、鉄骨製作の一般的な考え方として整理したものです(規準の数値や当社固有の手順ではありません)

■おわりに

鋼材の錆は、見た目の問題に見えて、実は品質の問題につながっています。錆びてはいけない物を濡らさないこと、摩擦面を正しい状態に保つこと、識別を消さないこと。置き場の段取りひとつで、後工程の手間が大きく変わります。

発信元のは、建築鉄骨の製作(Mグレード認定工場)を行っています。材料の手配・保管から加工・溶接・検査まで一貫して対応していますので、鉄骨製作のご相談・お見積りはお問い合わせからどうぞ。図面(PDF・DXF)を添えていただければ、より具体的にご返事できます。これまでの製作実績もあわせてご覧ください。

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