■結論:設計重量と製作重量は、同じ建物でも別の数字

鉄骨の数量拾いでは、同じ建物について2つの重さが出てきます。契約や見積の基準になる設計重量と、工作図(製作図)が固まった時点で確定する製作重量です。
- 設計重量:構造図の部材リスト(柱・梁・ブレースなど)の断面・長さから、JIS の単位質量で計算した重さ。契約・見積・精算の基準になる
- 製作重量:工作図が確定した時点の重さ。接合部材(ガセット・スチフナー・添え板)やボルト類まで含めた、実際に製作する重さ
👉 この2つは同じ建物でも一致しないのが普通です。差が出る理由を知っておけば、見積・契約の数字と、実際に製作した重さを比べるときに、どこまでが想定内の差で、どこから確認が必要かを判断しやすくなります。
重さの計算そのもの(単位質量の出し方)は鋼材の重量計算にまとめています。この記事では、設計重量と製作重量がなぜ・どこで変わるかに絞って整理します。
■数量拾いとは:部材リストから重さを積み上げる作業

数量拾いは、構造図の部材リストをもとに「長さまたは面積 × 対応する単位質量」で1本・1枚ごとの質量を計算し、本数・枚数に応じて足し上げて建物全体の重さを出す作業です。やり方そのものは鋼材の重量計算と同じで、JIS の基本質量(形鋼 0.785・鋼板 7.85)を使います。
- 構造図の部材リスト(符号・断面・材質・本数)をもとに、1本ごとの質量を計算する
- 柱・梁・ブレースなどの本体鉄骨と、ひさし・階段などの付帯鉄骨を区分する
- ボルト孔・開先・スカラップなどの欠けは、公共建築数量積算基準では原則として差し引かない
👉 ここで出てくる重さは、設計図書の段階の重さです。実際に工場が製作する重さとは、この先の工程でずれが生じていきます。
■設計重量(設計数量)が基準になる理由

見積や契約で使われる重さの多くは「設計数量」です。公共建築数量積算基準では、設計数量を設計図書の個数及び設計寸法から求めた数量としています。
- 設計寸法(呼称寸法)に、JIS の単位質量を掛けて計算する
- ボルト孔・開先・スカラップ、柱と梁の接続部のクリアランスによる欠けは、原則として差し引かない
- 柱・梁の継手のスプライスプレート(添え板)と高力ボルトは、接合する「あとの部分」に含めて数える
👉 設計重量は構造図が確定した時点の重さです。この時点では、個々の接合部の詳細(ガセットの形・スチフナーの枚数など)まで工作図として固まっていないことがあります。
■製作重量が変わる理由①:接合部材は工作図で確定する

柱・梁の継手のガセットプレート・スチフナー・添え板(スプライスプレート)・フィラープレートは、構造図の段階ではまだ形状や枚数まで描かれていないことがあります。これらは工作図(製作図)を作る過程で、初めて寸法・枚数が確定します。
- ガセットプレート・スチフナー:仕口の形式が決まってから、板の形状・枚数が固まる
- 添え板(スプライスプレート)・フィラープレート:板厚の差や継手の位置で、枚数・板厚が変わる
- 高力ボルト・ナット・ワッシャー:本数は、工作図の継手詳細が決まってから確定する
👉 公共建築数量積算基準でも、これらは「接合する、あとの部分」に含めるとされており、本体の柱・梁とは別に、継手の詳細が固まってから数量が動く部分です。工作図で何が決まるかは製作図(工作図)で決まることで解説しています。
■製作重量が変わる理由②:定尺の切り無駄と所要数量

鋼材は定尺(規格で決まった長さ)で購入し、必要な長さに切って使います。切り落とした端材は、出来上がった部材の重さには含まれませんが、購入した鋼材の重さには含まれます。
- 所要数量=設計数量+定尺の切り無駄・施工上やむを得ない損耗の割増。公共建築数量積算基準では、形鋼・鋼管・平鋼 5%、広幅平鋼・鋼板(切板)3%、ボルト類 4% が標準
- ロス材(端材)はスクラップとして売却され、精算では差し引かれる
👉 製作重量を「手配した鋼材の重さ」で見るか「出来上がった部材の重さ」で見るかでも、数字は変わります。定尺・切板の考え方は鋼材の発注から入荷までにまとめています。
■差が問題になる場面:精算・スクラップ控除・設計変更の見極め

設計重量と製作重量の差は、見積・契約の時点でおおむね前提にされているため、それ自体は問題になりません。確認したほうがよいのは、金額や数量が後から変わる場面です。
- 鋼材価格が大きく変動したときの単品スライド条項の精算:対象になる数量は、原則、設計図書の数量 ×(1+ロス率)までの設計数量
- 内訳書の「鉄骨スクラップ控除」:手配した鋼材の重さから、売却するロス材の重さを差し引く
- 工作図承認後に接合部材・板厚が変わった場合:質疑で済む範囲か、設計変更として扱うかを区別する
👉 重さの数字を比べるときは、どの段階の、どの範囲の重さかをそろえることが先です。「設計数量」「所要数量」「製作重量」は、それぞれ別の目的で使われる数字です。質疑と設計変更の違いは質疑応答書の書き方で解説しています。
■数量拾いでつまずきやすいところ
- 構造図の段階の重さ(設計重量)と、工作図確定後の重さ(製作重量)を、同じ数字として比べてしまう
- 接合部材(ガセット・スチフナー・添え板)が、どちらの数量に含まれているかを確認していない
- 「設計数量」という言葉を、ロスを含むか含まないか確かめずに使う(資料によって意味が違う)
- 定尺の切り無駄を、購入側の数量にしか反映していない(製品重量には反映されない)
- 工作図で確定した差分が、質疑の範囲か設計変更の範囲か、整理せずに進めてしまう
どれも「拾い方が間違っている」より先に起こる、「どの数字の話をしているか」のすれ違いです。
■まとめ
- 鉄骨の数量拾いでは、設計重量(契約・見積の基準)と製作重量(工作図確定後の実際の重さ)という、2つの重さが出てくる
- 設計重量は、構造図の部材リストから、JIS の単位質量で計算した重さ。孔・開先等の欠けは原則差し引かない
- 製作重量は、工作図で確定したガセット・スチフナー・添え板・ボルト類まで含めた重さ
- 鋼材は定尺で購入するため、切り無駄(所要数量の割増)の分、購入側の重さは製品重量より増える
- 差が問題になるのは、単品スライド条項の精算やスクラップ控除など、重さの数字を精算に使う場面
- 重さを比べるときは、どの段階・どの範囲の数字かを、先にそろえる
■参考にした基準・資料
この記事の内容は、次の公的資料にもとづいています。物件ごとの仕様・数量の扱いは、設計図書と工事監理者の指示が優先します。
- 国土交通省『公共建築数量積算基準(令和5年改定)』:第1編 総則 2 基本事項 (2)(設計数量・所要数量の定義)、第4編 躯体 第4章 鉄骨 第1節(鉄骨の区分)・第2節 1 通則 2)〜8)(単位質量を乗じた質量、欠除の扱い、接合部材の扱い、所要数量の割増の標準)
- 国土交通省『公共建築工事内訳書標準書式(建築工事編)令和7年12月改定』:7.鉄骨 (1) 本体鉄骨 1) 鋼材(所要数量)・2) 加工組立建方(設計数量)、鉄骨スクラップ控除
- 国土交通省『工事請負契約書第25条第5項(単品スライド条項)運用マニュアル(暫定版)』(平成20年7月16日):2-2(対象数量。設計数量=設計図書の数量×(1+ロス率)、ロス分を対象にするときはスクラップも対象材料とする)
- 単位質量の計算方法そのもの(JIS G 3192・3193・3194 など)は鋼材の重量計算で原典にもとづき確認済みのものを前提にしています。本記事は、その数値を踏まえて設計重量と製作重量の違いを整理したもので、新たな数値を独自に算出したものではありません
■おわりに
数量拾いは、計算の正確さだけでなく、「今どの段階の、どの範囲の重さを見ているか」を押さえることが大切な作業です。設計重量と製作重量の差は異常なことではなく、工程が進むにつれて当然に生じるものだと理解しておくと、後工程での確認もスムーズになります。
個別の物件は設計図書と工事監理者の指示が優先します。株式会社へむろ鉄工は、建築鉄骨の製作(Mグレード認定工場)を行っています。図面の読み取りから材料の手配・加工・溶接・検査まで一貫して対応していますので、鉄骨製作のご相談・お見積りはお問い合わせからどうぞ。図面(PDF・DXF)を添えていただければ、より具体的にご返事できます。
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株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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