鉄骨の見積を、重さで積む項目・別の単位で積む項目・範囲を決める項目の3つに分けた図

鉄骨の見積はどう作る?重量・加工・溶接・塗装・運搬の内訳【鉄骨ファブが解説】


■結論:鉄骨の見積は「重さで積む」「別の単位で積む」「範囲を決める」

鉄骨の見積を、重さで積む項目・別の単位で積む項目・範囲を決める項目の3つに分けた図
見積は3つの部分でできている

鉄骨の見積書を開くと、「t」の付いた行がいくつも並びます。鉄骨の見積は重さが基準、とよく言われるのはこのためです。

ただ、中身を分けてみると、見積は大きく 3 つの部分でできています。

  • 重さ(t)で積むもの:鋼材、工場加工組立(工場溶接を含む)、溶融亜鉛めっき、鉄骨運搬、現場建方
  • 別の単位で積むもの:高力ボルトの締付け(本)、現場溶接(m)、錆止め塗装(㎡)、アンカーボルト(か所)、試験(一式)
  • 範囲を決めるもの:付帯鉄骨、デッキ・スタッド、仮設金物、第三者の試験など、見積に含めるかどうかを決める項目

👉 見積どうしを比べるときは、金額より先に「何が含まれているか」をそろえるのが近道です。

この記事では、国土交通省が公開している公共建築工事の内訳書・見積書の標準書式と数量の積算基準をもとに、見積の組み立て方を整理します。金額や単価は時期・数量・地域・条件で変わるので扱いません。


■見積の中身:内訳書に並ぶ鉄骨の細目

公共建築工事内訳書標準書式の鉄骨の細目を、単位と数量の種類とともに並べた表
材料は所要数量、加工・運搬・建方は設計数量

公共建築工事の内訳書の標準書式では、本体鉄骨の内訳が「鋼材」と「加工組立建方」の 2 つに分かれています。

  • 鋼材:切板鋼板・形鋼・角形鋼管・平鋼・丸鋼を、規格・形状・寸法ごとに t(所要数量)で。残材の価値は「鉄骨スクラップ控除」として差し引く
  • 工場加工組立:溶接材料と溶接手間を含めて t(設計数量)で。工場溶接は、ここに入るのが標準の形
  • 工場錆止め塗装・溶融亜鉛めっき:塗装は種別ごとに ㎡(または t)、めっきは種別ごとに t
  • 鉄骨運搬・現場建方:t(設計数量)。建方は「揚重機別途」
  • 高力ボルト類:ボルトそのものは t(所要数量)、締付けは本数
  • 現場溶接:隅肉溶接 6mm に換算した長さ(m)

同じ「溶接」でも、工場溶接は加工組立の中、現場溶接は長さで別に数える、という違いがあります。現場溶接が多い設計では、その分が別の行で効いてきます。

公共工事の単価の決め方を定めた「公共建築工事標準単価積算基準」では、鉄骨工場加工費・現場建方・トルシア形高力ボルト締付け・現場溶接・アンカーボルト埋込みは、専門工事業者の見積価格を参考に定めるとされています。また、工場で加工する場合は運搬費を計上し、鉄骨建方用揚重機の費用は別途計上とされています。

👉 鉄骨の見積は、公共工事でも鉄骨製作工場や専門工事業者の見積が土台になります。見積書の行の並びを知っておくと、書式の違う見積どうしでも比べやすくなります。


■重さが基準になる理由:設計数量と所要数量

設計寸法とJISの単位質量から設計数量を出し、割増を加えて所要数量にする流れと、数え方の決まりを示した図
同じ建物でも t の数字は 2 つある

重さが基準になるのは、図面から誰が拾っても同じ数字になりやすいからです。「公共建築数量積算基準」では、鋼材の数量は、各部分の長さや面積を設計寸法で拾い、JIS で定める単位質量を掛けた質量とされています(H形鋼の単位質量の見方はH形鋼の寸法の読み方)。

この基準には、重さの数字が 2 種類あります。

  • 設計数量:設計図書の寸法から求めた数量
  • 所要数量:定尺寸法による切り無駄や、施工上やむを得ない損耗を含んだ数量。鉄骨材料は設計数量に、形鋼・鋼管・平鋼 5%、広幅平鋼・鋼板(切板)3%、ボルト類 4%の割増をするのが標準

数え方にも決まりがあります。ボルト孔・開先・スカラップ・接続部のクリアランスによる欠けは「ないもの」として数え、1 か所 0.1㎡以下のダクト孔なども同じ扱いです。板厚の差などで 1mm を超える隙間はフィラープレートが入るものとして数えます。溶接は種類・断面ごとに長さを求めて隅肉溶接 脚長 6mm に換算した延べ長さに、錆止め塗装は部材の表面積にします。

👉 見積の「総重量」が合わないときは、まず設計数量か所要数量か、どこまでを本体鉄骨に入れたかを確かめます。拾い方の違いだけで数字がずれることがあります。


■重さだけでは決まらない:同じ重さでも手間が違う

大きな部材が少ない場合と小さな部材が多い場合を並べ、重さ以外に効いてくる要素を表にした図
重さは同じでも、作業の回数は同じではない

重さは見積のものさしですが、手間の量をそのまま表すわけではありません。数量積算基準が溶接の長さや塗装の面積を重さと別に数えるのも、そのためと考えられます。

同じ重さでも、次のような違いで手間は変わります(一般的な考え方の整理です)。

  • 部材・ピースの数:小さな部材やガセット・スチフナーが多いほど、切断・孔あけ・組立の回数が増える
  • 溶接の種類と量:完全溶込み溶接の箇所、板厚、柱梁の仕口の形式
  • 塗る面積:薄い部材ほど、重さあたりの表面積が大きい
  • 鋼種・断面:手配しやすい断面か、特殊な鋼種・寸法か(鋼材の発注から入荷まで)
  • 長さ・幅:運搬の車両や積み方、建方の手順(建方当日までの段取り)
  • 検査・仮組:超音波探傷試験や仮組の適用は特記による

公共建築工事標準仕様書でも、鉄骨製作工場の加工能力等(工場の区分)、完全溶込み溶接部の超音波探傷試験、仮組の実施は、いずれも「特記による」とされています。特記の中身で、同じ重さの建物でも必要な工場や検査が変わります(鉄骨工場のグレード、仮組の要否)。

👉 「t 当たりいくら」で比べられるのは、部材構成・仕様・範囲がそろっているときだけです。条件が違う建物の数字をそのまま当てはめると、見積の読み違いにつながります。


■別になりやすいもの:含む・含まないを ○× で決める

公共建築工事見積標準書式の鉄骨工事の見積条件・範囲リストにある区分と項目を抜粋した表
範囲リストで、含む・含まないをそろえる

見積の食い違いがいちばん起きやすいのは、本体鉄骨の周りにある「どこまでが鉄骨工事か」の線引きです。

国土交通省の「公共建築工事見積標準書式」には、鉄骨工事用の工事見積条件・範囲リストがあります。依頼者が「指示」欄に、見積者が「確認」欄に ○(含む)・×(含まない)を書き、見積書と一緒に提出する仕組みです。並んでいる項目は、たとえば次のとおりです。

  • 付帯鉄骨:ひさし、階段、階段手摺、屋上工作物、PC板・カーテンウォール・ALC板の一次ファスナー
  • 柱脚処理:アンカーボルト、アンカーフレーム、テンプレート
  • 床関連:デッキプレート、スタッドボルト(工場打/現場打)、コンクリート流止め
  • スリーブ補強:穴あけのみ/スリーブ付/スリーブ補強
  • 試験:工場・現場の溶接部の超音波探傷試験、技量付加試験、高力ボルト検査
  • 仮設金物・専用仮設:タラップ、親綱用金物、吊金物、建方用補強材、鉄骨足場、養生ネット

このうち溶接部の超音波探傷試験は、標準仕様書では、当該工事の鉄骨製作工場に所属しない試験機関の技能資格者が行うとされています(受入検査の考え方はUT(超音波探傷検査)とは)。見積標準書式の内訳書でも「工場及び現場 第三者」として付帯鉄骨等の側に 1 行あり、本体鉄骨とは別の行です。

範囲リストに行が無いものにも注意します。揚重機(標準単価積算基準では別途計上)や、工作図の作成・承認の進め方などは、どちらが持つかを見積条件に書き添えておくと確実です。工作図で何が決まるかは製作図(工作図)で決まることで解説しています。

👉 見積の比較は、範囲リストを同じ内容でそろえてから。○×が違う見積は、金額が違って当然です。


■見積依頼でそろえると早く正確になる情報

見積依頼のときにそろえたい図面・仕様と、条件・範囲の項目を2つの枠に分けたチェックリスト
図面と条件がそろうほど、仮定が減る

見積標準書式では、見積依頼のときの書類を見積依頼書・見積条件書・設計図書(見積りに必要な部分)を基本に、必要に応じて見積書表紙・参考数量を添える組み立てにしています。鉄骨の見積では、特に次の情報がそろうと早く、ぶれの少ない見積になります。

  • 構造図一式:伏図・軸組図・部材リストに加え、継手・仕口・柱脚の標準図と詳細図
  • 意匠図:付帯鉄骨(階段・ひさし等)の位置、開口、納まり
  • 特記仕様書:鋼種、工場の区分、溶接部の試験、塗装かめっきか(溶融亜鉛めっきと塗装の選び方)、仮組
  • 設備・外装との取合い:スリーブ、ファスナー、昇降機まわりの鉄骨
  • 条件:工事場所、搬入経路と車両の制限、予定工期と建方の時期、支給品の有無
  • 範囲:建方・揚重機・アンカー・デッキ・スタッド・検査・仮設金物を含むか(範囲リスト)
  • 図面の版:どの時点の図面で見積もったか

建設業法第 20 条第 3 項では、建設工事の注文者は、契約の締結や入札の前に、工事内容などをできる限り具体的に提示し、見積りに必要な期間を設けることとされています。また同条第 1 項では、建設業者は、材料費・労務費などの内訳を記載した見積書を作るよう努めることとされています。

👉 図面がそろわないと仮定が増え、仮定が増えるほど見積の幅は広がります。概算の段階なら、「何を仮定したか」を見積条件に書いてもらうと、後で比べるときに役立ちます。


■見積でつまずきやすいところ

  • 総重量が見積ごとに違う。設計数量と所要数量、本体鉄骨と付帯鉄骨の区分がそろっていない
  • 工場溶接が加工費に含まれているのか、別の行なのかが見積ごとに違う
  • 現場溶接の長さが「実長」か「隅肉 6mm 換算」か、書かれていない
  • 塗装かめっきか、塗装の範囲(摩擦面・現場溶接部まわりなど)が決まっていない
  • 第三者の超音波探傷試験、揚重機、仮設金物がどちらの見積にも入っていない(または両方に入っている)
  • 古い版の図面で見積もり、設計変更の分が反映されていない
  • 「t 当たり」の数字だけで、部材構成や仕様の違う建物と比べてしまう

どれも、見積の前提を書面でそろえることで防げます。


■まとめ

  • 鉄骨の見積は、重さで積む・別の単位で積む・範囲を決める、の 3 つでできている
  • 公共工事の内訳書では、鋼材は t(所要数量)、工場加工組立(溶接材料・溶接手間共)・運搬・建方は t(設計数量)
  • 高力ボルト締付けは本、現場溶接は隅肉 6mm 換算の m、錆止め塗装は ㎡
  • 建方の揚重機は別途計上。加工で出る残材に価値があればスクラップ控除
  • 鋼材の数量は、設計寸法 × JIS の単位質量。所要数量の割増は形鋼等 5%・鋼板(切板)3%・ボルト類 4%が標準
  • 重さは手間をそのまま表さない。部材数・溶接量・塗る面積・仕様で変わる
  • 付帯鉄骨・試験・仮設金物などは、見積条件・範囲リストの ○× でそろえる
  • 見積依頼は、構造図一式・意匠図・特記仕様書と、条件・範囲・図面の版をそろえる

■参考にした基準・資料

この記事の内容は、次の公的資料にもとづいています。物件ごとの仕様は、設計図書と監理者の指示が優先します。金額・単価は扱っていません。


■おわりに

鉄骨の見積は、重さを土台に、重さでは表れない手間と、どこまでを含むかという範囲を重ねて組み立てます。図面・仕様・範囲がそろうほど、見積は早く、比べやすくなります。

発信元のは、建築鉄骨の製作(Mグレード認定工場)を行っています。図面の読み取りから材料の手配・加工・溶接・検査まで一貫して対応していますので、鉄骨製作のご相談・お見積りはお問い合わせからどうぞ。図面(PDF・DXF)と特記仕様書、見積の範囲を添えていただければ、より具体的にご返事できます。これまでの製作実績もあわせてご覧ください。

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