鉄骨造・RC造・木造それぞれの作り方・工期の傾向・改修のしやすさを並べた図

鉄骨造と RC 造・木造の比較|工期・費用・改修【鉄骨ファブが解説】


■結論:工法の性格が違うと、工期・改修のしやすさの傾向も変わる

鉄骨造・RC造・木造それぞれの作り方・工期の傾向・改修のしやすさを並べた図
工法の性格の違いが、工期や改修のしやすさの傾向につながる

鉄骨造・RC(鉄筋コンクリート)造・木造は、いずれも建築基準法にもとづく代表的な構造方法です。
どれを選ぶかによって、工期・費用・改修のしやすさの傾向が変わります。

  • 工期:鉄骨造は部材を工場で製作してから現場で組み立てる工法のため、現場作業が組立・接合に集中し、工期を短くしやすい傾向があります
  • 費用:材料費・仮設(型枠など)・工期の長さ・維持管理費など、複数の要因で決まり、構造だけでは一概に比較できません
  • 改修:接合方法が乾式(ボルト・金物)か湿式(コンクリートによる一体化)かで、増改築のしやすさに差が出ます

👉 どの構造にも向く場面と制約があります。比較は「どちらが優れているか」ではなく、「その建物の用途・規模・将来の使い方にどちらが合うか」を考えるためのものです。

この記事では、工法の違いから、工期・費用・耐火性能・構造計算・改修のしやすさまで、建築基準法や JASS などの基準にもとづいて整理します。


■工法の違い:現場で「組む」のか「固める」のか

鉄骨造・RC造・木造それぞれの工程の流れを示した図
鉄骨造・木造は部材を組む、RC造は現場で固める

建築基準法施行令の構造強度に関する章は、構造の種類ごとに節が分かれています。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造は、それぞれ作り方が異なる構造です。

  • 鉄骨造:柱・梁などの部材を工場で加工・溶接し、現場では高力ボルトや溶接で接合します。部材そのものは現場に来る前にほぼ完成しています
  • RC造:現場で鉄筋を組み、型枠を設置し、コンクリートを流し込んで一体化させます。部材は現場で「固まって」できます
  • 木造:柱・梁・土台などの軸組を、金物や釘・ボルトで接合します。プレカット(工場での事前加工)を使う場合は、鉄骨造に近い作り方になります

👉 この違いが、のちの工期・改修のしやすさの差につながります。鉄骨造・木造は「部材を組む」、RC造は「現場で固める」というのが基本の性格です。


■工期の違いが生まれる理由:現場で「待つ」工程があるかどうか

鉄骨造・RC造・木造の工程を比較した概念図。RC造は養生待ちの工程が入る
工程の順序を示す概念図(長さは実際の日数を表さない)

工期の長さは、構造そのものより「現場で何を待つ必要があるか」で変わります。

  • RC造:コンクリートは、一般に材齢28日の強度を品質管理の基準の一つとします。ただし、型枠の存置・取外しは一律に28日待つという意味ではなく、部位、セメントの種類、気温、材齢または確認した圧縮強度など、適用する基準と施工計画に従って判断します
  • 鉄骨造:部材の加工・溶接・検査を工場で進め、基礎工事と並行できる場合があるため、現場では建方・接合を中心に工程を組みやすい傾向があります。ただし、建方、クレーン作業、現場溶接などは風雨の影響を受けるため、常に天候の影響が小さいとは限りません
  • 木造:プレカット部材を使う場合は現場作業が比較的少なくなりますが、現場での加工が多い工法では工期が延びることがあります

👉 「現場で固める工程があるかどうか」が工期の差を生む大きな要因です。ただし実際の工期は、規模・階数・工区の分け方・天候などにも左右されます。


■費用の違いを生む要素(金額ではなく、効く要因を見る)

費用の違いを生む5つの要素(材料費・仮設・工期の長さ・人件費機械費・維持管理費)を並べた図
費用は構造だけでなく、複数の要因の組合せで決まる

費用は構造だけで決まるものではなく、複数の要因の組合せで決まります。ここでは金額ではなく、費用に影響する要因を整理します。

  • 材料費:鋼材・コンクリート・木材それぞれの使用量と単価(市況により変動します)
  • 仮設:RC造では型枠・支保工、鉄骨造では揚重機・足場・建方時の仮設補強、木造でも足場などが必要です。仮設の種類と数量は、構造種別だけでなく建物規模・敷地条件・施工計画で変わります
  • 工期の長さ:工期が延びるほど、現場管理費や仮設のレンタル期間などの費用がかかりやすくなります
  • 人件費・機械費:溶接工・型枠大工・鉄筋工など、必要な職種と作業量が構造によって異なります
  • 維持管理費:仕上げ・防食(鉄骨造の防錆・防火被覆など)・点検の方法と頻度

👉 構造ごとの費用の傾向は、建物の規模・仕様・地域・市況によって大きく変わります。具体的な金額は、個別の設計図書・見積りで確認する必要があります。


■耐火性能の考え方の違い:「燃えない」のではなく「一定時間維持する」

鉄骨造・RC造・木造それぞれの耐火性能の確保方法を並べた図
構造ごとに耐火性能を確保する考え方が異なる

建築基準法では、建物の用途・規模(階数・高さ・延べ面積など)に応じて、耐火建築物・準耐火建築物とすることが求められる場合があります(建築基準法第2条、用語の定義)。構造ごとに、耐火性能を確保する考え方が異なります。

  • 鉄骨造:鋼材は高温になると強度が急激に低下するため、必要な耐火性能を満たすために耐火被覆(耐火塗料・ロックウール・けい酸カルシウム板など)を施すことがあります
  • RC造:コンクリートは不燃材料ですが、部材として必要な耐火性能は、部材寸法、鉄筋のかぶり厚さ、仕様・認定などで確認します。条件によっては鉄骨造のような別張りの耐火被覆を設けない構成もあります
  • 木造:木材は燃える材料であるため、準耐火構造等にする場合は、防火被覆や、燃えても断面が一定以上残るようにする設計(燃えしろ設計)などの措置が必要になることがあります

👉 耐火性能は、構造材料が「燃える・燃えない」だけで決まるものではありません。法令で求められる時間、非損傷性・遮熱性・遮炎性などを、部位に応じて満たすよう設計します。必要な性能は建物の規模・用途・階などで変わるため、計画の初期段階で確認します。


■構造計算の違いと規模の目安:どの構造でも規模に応じた計算が必要

仕様規定・許容応力度等計算・保有水平耐力計算の3段階と、構造別の規模の傾向を示した図
規模が大きくなるほど、求められる構造計算のレベルが上がる

建築基準法及び同施行令では、構造の種類や建物の規模に応じて、必要な構造計算のレベルが定められています。

  • 必要な確認方法は、構造種別だけでなく、階数、高さ、延べ面積、用途、架構形式などで決まります
  • 2025年4月施行の改正後、木造は2階建て以下かつ延べ面積300㎡以下などの範囲で、構造計算によらず仕様規定により安全性を確認できる場合があります。一方、延べ面積300㎡を超える木造建築物は、少なくとも許容応力度計算が必要です
  • 鉄骨造・RC造でも、規模や構造方法に応じて許容応力度等計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算、時刻歴応答解析など、法令に定める方法を選びます
  • 鉄骨造・RC造は大きなスパンや中高層建築に用いられることが多く、木造にも大規模・中高層化のための技術基準があります。ただし、実現できる規模やスパンは個別設計で決まります

👉 構造の種類にかかわらず、規模や用途に応じた構造計算が必要です。「木造だから計算が要らない」ということではありません。


■改修・増改築のしやすさの違い:乾式接合か、一体化しているか

鉄骨造・木造の乾式接合とRC造の一体化を比較し、耐震改修の例を示した図
改修のしやすさは接合方法の違いが影響する

改修のしやすさには、接合方法や一体性だけでなく、耐力壁・ブレース・柱・梁などの配置、既存図面の有無、劣化状況、現行法への適合確認が影響します。

  • 鉄骨造・木造:ボルトや金物を使う接合もありますが、鉄骨には溶接接合、木造には耐力壁などがあり、部材を単純に取り外せるとは限りません。構造部材の撤去・開口・増設は、構造安全性を確認して計画します
  • RC造:部材が一体化しているため、新たに開口を設ける場合は切断・補強が必要になります。耐震改修では、耐震壁の増設やブレース(鉄骨の斜材)の設置などの工法が使われます
  • 国土交通省は、公共建築物の改修工事について『公共建築改修工事標準仕様書』を公表しており、構造別に改修の仕様がまとめられています

👉 改修のしやすさは構造の種類だけでなく、既存図面の有無、現地調査、耐力要素の配置、法令上必要な手続きに左右されます。改修を計画する際は、既存調査と構造検討から始めるのが基本です。


■どの構造を選ぶかの判断軸

構造を選ぶときの判断軸5項目を並べたチェックリストの図
構造の選定は、設計の初期段階で検討する事項
  • 建物の用途・規模(階数・スパン・必要な耐火性能)
  • 工期の制約(開業・引渡しの時期が決まっているか)
  • 将来の増改築・用途変更の可能性
  • 周辺環境への配慮(コンクリート打設や重機作業の音・振動など)
  • 維持管理の方針(点検・補修のしやすさ)

👉 構造の選定は、設計の初期段階で構造設計者・施工者と一緒に検討する事項です。この記事は一般的な傾向の整理であり、個別の建物の判断材料そのものではありません。


■まとめ:3つの構造の傾向比較

作り方の性格・工期の傾向・耐火性能の確保・改修のしやすさを鉄骨造RC造木造で比較した表
いずれも一般的な傾向。実際の判断は規模・仕様・現況調査で行う
  • 鉄骨造・RC造・木造は、建築基準法にもとづく代表的な構造方法で、作り方の性格が異なる(組む/固める)
  • 工期は、工場製作と現場作業を並行できるか、現場での養生・待ち工程があるか、建方時の天候など複数の条件で変わる
  • 費用は材料費・仮設・工期・維持管理費など複数の要因の組合せで決まり、構造だけでは比較できない
  • 耐火性能は、材料の燃焼性だけでなく、部位ごとに求められる非損傷性・遮熱性・遮炎性を満たす仕様で確保する
  • 構造計算は、構造の種類にかかわらず規模・用途に応じて必要になる
  • 改修のしやすさは接合方法だけでなく、耐力要素の配置、既存図面、現地調査、法令上の手続きに左右される

この記事を書いた会社
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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■参考にした基準・資料

この記事の内容は、次の基準・資料にもとづいて一般的な傾向を整理したものです。個別の建物については、設計図書・工事仕様書と監理者の指示が優先します。鉄骨造の製作に関するご相談はお問い合わせからどうぞ。