■結論:4つの数字は「せい・辺・ウェブ厚・フランジ厚」の順

図面の H-400×200×8×13 は、次の順に並んでいます。
せい(高さ H)400mm / 辺(フランジ幅 B)200mm / ウェブ厚 t1 = 8mm / フランジ厚 t2 = 13mm。単位はすべてミリメートルです。
👉 大事なのは、「H-400×200」までしか書かれていないと断面が決まらないことです。JIS G 3192 には 400×200 のシリーズが 2 つあり、H-396×199×7×11(56.1 kg/m)と H-400×200×8×13(65.4 kg/m)で、質量が約 1.17 倍ちがいます。
頭の「H」は形鋼の種類を表す記号で、材質は別に書きます(例:H-400×200×8×13 SN490B)。この記事では、記号の意味・同じ呼び名が重なる理由・重さの出し方・許容差までを順に説明します。
■断面の記号:H・B・t1・t2・r が何を指すか

JIS G 3192 は H形鋼を「H の字に似た断面形状を持つ形鋼」と定義し、通常はユニバーサル圧延機で作り、平行する各々の二辺が等厚で、辺の内面に傾斜はない、としています。断面各部の寸法はミリメートルで、辺(A・B)・高さ(H)・厚さ(t・t1・t2)のうち、その断面形状に該当する項目を表示します。
- せい(高さ H):断面の外から外までの高さ。梁の曲げに一番効く寸法
- 辺(フランジ幅 B):上下の板(フランジ)の幅
- ウェブ厚 t1:縦の板(ウェブ)の厚さ。せん断力を受け持つ
- フランジ厚 t2:上下の板の厚さ。曲げの大半を受け持つ
- 隅の丸み r:ウェブとフランジが交わる部分の丸み。圧延でできるもので、図面には書かれないが断面積の計算には入る
図面では「H-400×200×8×13」のようにハイフンと × で区切って書きます。圧延して作る H形鋼は H、板を切って溶接で組み立てた材は BH(組立H形鋼・ビルドH)と書き分けるのが一般的です。H形鋼のウェブを切って分割したものは CT形鋼と呼び、JIS でも別の表になっています。
覚えておくと役に立つのが内法(うちのり)高さです。内法高さ = せい H -2×フランジ厚 t2 で、ウェブの実際の高さにあたります。JIS は「同一シリーズに属する H形鋼は、内法高さが一定である」と書いています。400×200 シリーズなら、400-2×13=374、396-2×11=374 でどちらも 374mm です。圧延のロールを共用するためで、次の章の「呼び名が重なる」理由もここにあります。
■同じ「400×200」でも2種類ある:t1×t2 まで確認する

JIS G 3192 の標準断面寸法の表では、シリーズ「400×200」の中に次の 2 つが並んでいます。
- H-396×199×7×11:断面積 71.41cm²、単位質量 56.1kg/m、断面係数 Zx = 999cm³
- H-400×200×8×13:断面積 83.37cm²、単位質量 65.4kg/m、断面係数 Zx = 1,170cm³
隅の丸み r はどちらも 13mm、内法高さもどちらも 374mm です。違うのは外側の寸法と板の厚さで、その差が質量で約 9kg/m、断面係数で約 17% になります。
👉 図面に「H-400×200」としか書かれていなければ、どちらか確認するまで先に進めません。重量も強さも変わるため、見積・材料発注・工作図のどの段階でも t1×t2 までそろっていることを確かめます。
なお JIS の表では、H-396×199×7×11 のように *印が付いた寸法は「汎用品以外」を示します。汎用品でない断面は流通量が少なく、納期や手配の条件が変わることがあるため、材料を手配する側は印の有無も見ます。
■細幅・中幅・広幅と、外法一定H形鋼

JIS は「高さと辺の関係によって、細幅(beam)・中幅(beam)及び広幅(column)に区分されることがある」とし、さらに「辺が高さの 0.8 倍を超える H形鋼を“コラム(column)”と呼ぶことがある」と書いています。
- 細幅(例:H-400×200×8×13/65.4kg/m):せいに対して辺が狭い。同じ重さで曲げに強く、梁に向く
- 中幅(例:H-390×300×10×16/105kg/m):梁にも小さな柱にも使えるバランス型
- 広幅(例:H-400×400×13×21/172kg/m):せいと辺がほぼ同じ。弱軸方向にも効くので柱に向く
同じ「せい 400」でも 65.4/105/172kg/m と、重さは約 2.6 倍の幅があります。図面の 400 という数字だけを見て「同じくらいの材料」と考えないことが大切です。
もうひとつ知っておきたいのが外法(そとのり)一定H形鋼です。JIS は「フランジの厚さによらず、高さが一定の H形鋼」と定義していて、標準断面寸法も表16 に規定されています。ふつうの H形鋼はフランジを厚くするとせいも大きくなりますが、外法一定ならフランジ厚を変えてもせいが変わりません。梁のレベルや納まりをそろえやすいため建築でよく使われ、各メーカーが商品名を付けて販売しています。
■重さの出し方:断面積 → 単位質量 → 1本の質量

JIS は形鋼の質量を計算質量とし、計算に使う寸法は実測した寸法ではなく呼称寸法(商取引で用いる寸法)と決めています。H形鋼の断面積の式は次のとおりです。
断面積(mm²)= t1×(H -2×t2) + 2×B×t2 + 0.858×r²(これを 1/100 して cm² にする)
単位質量(kg/m)= 0.785 × 断面積(cm²)。0.785 は「断面積 1cm²・長さ 1m の質量」で、鋼の密度 7.85g/cm³ から決まっています。
H-400×200×8×13(r=13)で確かめてみます。
- t1×(H -2×t2) = 8×(400-26) = 2,992
- 2×B×t2 = 2×200×13 = 5,200
- 0.858×r² = 0.858×169 = 145.0
- 合計 8,337mm² = 83.37cm²(JIS の表の値と一致)
- 単位質量 = 0.785×83.37 = 65.4kg/m
- 長さ 6m の1本 = 65.4×6 = 392kg
断面積は有効数字 4 桁、単位質量と 1 本の質量は有効数字 3 桁(1,000kg を超えるものは kg の整数値)に丸める決まりです。
👉 呼称寸法で計算するので、図面の寸法さえ読めれば、鉄骨重量は誰が計算しても同じ値になります。見積の鉄骨重量は、この単位質量に長さと本数を掛けて積み上げるのが基本です。
実際に計った重さには幅があります。注文者の要求がある場合の質量の許容差は、厚さ 10mm 未満で ±5%、10mm 以上で ±4%(同一寸法の形鋼一組・質量 1t 以上に適用。厚さは t1・t2 の厚い方)です。なお、設計重量と製作重量の差は、切断代・ガセット・スカラップ・開先などの加工分から出るもので、この許容差とは別の話です。
■寸法の許容差と標準長さ

H形鋼は圧延品なので、図面の数字ぴったりには仕上がりません。JIS G 3192 の表4 が許容差を決めています。H-400×200×8×13 に当てはまるものを抜き出すと、次のようになります。
- 辺 B:400 以下は ±2.0mm(400 超えは ±3.0mm)
- せい H:800 未満で辺 B が 400 以下なら ±2.0mm
- フランジ厚 t2:16 未満は ±1.0mm(16 以上 25 未満は ±1.5mm)
- ウェブ厚 t1:16 未満は ±0.7mm(16 以上 25 未満は ±1.0mm)
- 長さ:7m 以下は +40mm/-0mm(7m を超えると 1m ごとにプラス側へ 5mm 加える。マイナス側は 0)
- 曲がり:せい H が 300 超えで長さの 0.10% 以下(300 以下は 0.15% 以下)
- ウェブ反り:せい H が 350 超え 550 未満で 2.5mm 以下
標準長さは 6.0・7.0・8.0・9.0・10.0・11.0・12.0・13.0m の 8 種類です。長さの許容差がプラス側にしか無いのは、切って使う前提だからです。
👉 工場で実測して図面と 1〜2mm 違っても、多くは規格の範囲内です。「違う」ではなく「許容差の中かどうか」で見るのが、鋼材を扱うときの考え方になります。この幅があるため、開先の加工やガセットの取付けでは現物合わせの調整が必要になることがあります。
■図面で H形鋼を見たときの確認どころ
- 4 つの数字がそろっているか(せい×辺×t1×t2)。2 つしか無ければ断面が決まらない
- 材質の記号が書かれているか(SN400B・SN490B・SS400 など)。強さも溶接性も変わる
- 圧延の H か、組立の BH か。BH なら板厚・板幅の手配と溶接が別に要る
- 外法一定H形鋼の指定があるか。ふつうの H形鋼と型番が違う
- 汎用品かどうか。汎用品以外の断面は流通量が少なく、納期に影響することがある
- 長さは標準長さ(6〜13m)で足りるか。継ぐ位置と継手の指定を合わせて見る
鉄骨工場では、この読み取りを製作図(工作図)に落とし込み、材料の発注・切断・孔あけ・溶接まで同じ数字でつないでいきます。最初の 1 行の読み違いが、そのまま材料の手配ミスになります。
■まとめ
- H-400×200×8×13 = せい 400・辺 200・ウェブ厚 8・フランジ厚 13(単位 mm)
- 「H-400×200」だけでは断面が決まらない。400×200 には 396×199×7×11 と 400×200×8×13 の 2 種類がある
- 内法高さ(H -2×t2)は同じシリーズで一定。400×200 シリーズはどちらも 374mm
- 細幅は梁向き、広幅は柱向き。辺がせいの 0.8 倍を超えるものは「コラム」と呼ぶ
- 外法一定H形鋼は、フランジ厚が変わってもせいが一定。JIS の表16 に規定がある
- 断面積 = t1×(H -2t2) + 2×B×t2 + 0.858×r²、単位質量 = 0.785×断面積(cm²)
- H-400×200×8×13 は 83.37cm²・65.4kg/m。長さ 6m なら 1 本 392kg
- 計算は呼称寸法で行う。質量の許容差は厚さ 10mm 未満 ±5%、10mm 以上 ±4%
- 寸法の許容差は せい ±2.0・辺 ±2.0・t2 ±1.0・t1 ±0.7(400×200 の場合)
- 標準長さは 6〜13m の 1m 刻み。長さはプラス側だけ許容される
■参考にした基準・資料
この記事の数値と用語は、次の基準にもとづいています。物件ごとの断面・材質・長さは設計図書と監理者の指示が優先します。
- JIS G 3192『熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差』:箇条3.1(H形鋼の定義。ユニバーサル圧延機、二辺が等厚、辺の内面に傾斜なし、細幅・中幅・広幅の区分、辺が高さの 0.8 倍を超えるものを“コラム”と呼ぶこと、外法一定H形鋼を含むこと)、箇条5(寸法の表し方)、箇条6・表2(標準長さ 6.0〜13.0m)、箇条7・表4(H形鋼の形状及び寸法の許容差)、箇条8・表6(質量の計算方法。基本質量 0.785kg/cm²・m、H形鋼の断面積の式)、箇条9・表7(質量の許容差)、表15(H形鋼の標準断面寸法・断面積・単位質量・断面特性。*印=汎用品以外)、表16(外法一定H形鋼)
- 同上:H-400×200×8×13 = r13・83.37cm²・65.4kg/m・Ix 23,500cm⁴・Zx 1,170cm³/H-396×199×7×11 = r13・71.41cm²・56.1kg/m・Ix 19,800cm⁴・Zx 999cm³/H-390×300×10×16 = 105kg/m/H-400×400×13×21 = r22・172kg/m(いずれも表15)
- 上記の本文・表は、一般社団法人日本鉄鋼連盟が公開している JIS G 3192 改正原案の PDF で 2026-09-24 に原文を確認しました(現行版は JIS G 3192:2021)。実務では最新版の規格票とメーカーのカタログで確認してください
- 材質の記号(SS400・SM490・SN400B・SN490B など)の意味は、JIS G 3101・JIS G 3106・JIS G 3136 によります。詳しくは関連記事にまとめています
- 断面の使い分け(梁・柱)に関する記述は、建築鉄骨の一般的な考え方を整理したものです(当社の物件固有の仕様ではありません)
■おわりに
H形鋼の寸法表記は、慣れてしまえば 4 つの数字を読むだけです。ただし「H-400×200」で止まっている図面や、汎用品以外の断面、外法一定H形鋼の指定など、確認しないと先に進めない場面は実際にあります。図面の 1 行を最後まで読み切ることが、材料の手配ミスを防ぐ一番の近道です。
株式会社へむろ鉄工は、建築鉄骨の製作(Mグレード認定工場)を行っています。図面の読み取りから材料の手配・加工・溶接・検査まで一貫して対応していますので、鉄骨製作のご相談・お見積りはお問い合わせからどうぞ。これまでの製作実績もあわせてご覧ください。
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