■結論:スカラップは、溶接の重なりを避けるための切り欠き

スカラップとは、梁の端を柱に溶接するときに、梁ウェブ(腹板)の角を半円に切り欠いたものです。フランジの開先溶接と、ウェブの溶接が重ならないようにするための『逃げ』です。
ところがこの切り欠きは、地震のときに力が集中する弱点にもなります。この記事では、なぜ切り欠くのか、なぜ弱点になったのか、そしてどう強くするのかを見ていきます。
■なぜ切り欠く?(溶接の重なりを避ける)

切り欠きが無いと、フランジの溶接とウェブの溶接が交わる部分ができ、そこは欠陥が出やすくなります。
ウェブの角を切り欠く(スカラップ)と、2つの溶接が離れ、フランジを根元まで溶接できるようになります。つまりスカラップは、溶接の品質と作業性のための工夫です。
■弱点:地震でスカラップ底から割れた

スカラップは切り欠きなので、その底に力が集中します(応力集中)。
1995年の阪神・淡路大震災では、梁の端がこのスカラップ底を起点に割れる被害が多く見られました。これをきっかけに、告示や指針で、スカラップ底の粘り強さ(靭性)に配慮するようになりました。
■ノンスカラップ工法(切り欠きをなくす)

ノンスカラップ工法は、スカラップ(切り欠き)自体をなくす工法です。フランジの溶接が連続し、力が集中する『底』が無いので、梁端の粘り強さ(靭性)が上がります。
地震に強い接合として、重要な建物の梁端で使われます。ただし、裏当て金の付け方や溶接の順番など、専用の溶接施工要領(WPS)に従う必要があります。
■3つの選び方(スカラップの形)

梁端の作り方には、大きく3つの選び方があります。
- 従来型スカラップ:半円の切り欠き。作業はしやすいが、底に力が集中しやすい
- 改良型スカラップ:底を大きな半径にして、力の集中をやわらげた形
- ノンスカラップ工法:切り欠き自体をなくす。最も粘り強いが、施工に手間がかかる
■まとめ:切り欠きは逃げだが、弱点にもなる

スカラップは、溶接の重なりを避ける『逃げ』ですが、切り欠きゆえに力が集中する弱点にもなります。地震でここから割れた教訓から、改良型スカラップやノンスカラップ工法で梁端を粘り強くする考え方が広がりました。
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参考にした基準:日本建築学会 建築工事標準仕様書 JASS 6 鉄骨工事/鉄骨工事技術指針/梁端接合部に関する建築基準法の告示・関連指針。形状や適用は各基準・設計図書に従います。
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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