■結論:鍛冶工は「寸法どおりに組む人」、溶接工は「接合を仕上げる人」

鉄骨製作工場の求人でよく並ぶ「溶接工」と「鍛冶工」。鍛冶工は工作図を読み、鋼材にケガキをして、切断・孔あけ・開先加工をし、定盤の上で部材を寸法どおりに組む人です。溶接工は、組まれた部材の開先と裏当て金を確認し、本溶接で接合を仕上げ、外観と寸法を自分で検査する人です。
2つの職種は別々に働くのではなく、同じ部材を前後で受け持ちます。鍛冶工の組立が正確でないと開先のすき間が狂い、溶接工はきれいに溶かせません。溶接工の溶かす順序が悪いと、鍛冶工が出した寸法が歪みで狂います。だからどちらも、次の工程の検査で数字と目で確かめます。
👉 なお「鍛冶工」の意味は会社や現場で幅があります。建設現場では現場での鉄骨の取付け・溶接を指すことが多く、鉄骨製作工場では組立担当を指すことが多い言葉です。この記事では鉄骨製作工場の組立担当として書きます。
■部材ができるまでの流れと、鍛冶工・溶接工の分担

建築鉄骨の部材は、設計図から起こした工作図をもとに、次の順で作られます(一般的な流れ。詳しくは関連記事「建築鉄骨はどうやって作られる?」)。
- 切断(鍛冶工):バンドソーやガス切断で鋼材を長さに切る
- 孔あけ・ケガキ(鍛冶工):ボール盤・アトラエースでボルト孔をあけ、取付位置をケガく
- 組立・仮付け(鍛冶工+溶接工):定盤の上で寸法どおりに組み、仮付けで固定する
- 本溶接(溶接工):CO₂半自動溶接で、下向・横向で溶かす
- 検査(溶接工・検査担当):寸法・外観・超音波探傷(UT)を確認し記録する
- 塗装・出荷(鍛冶工ほか):錆止め塗装、符号付け、建方の順に積み込む
鍛冶工の出来が決めるのは、部材の寸法・直角・孔の位置・開先のすき間、そしてその日の工場の流れ(段取り)です。溶接工の出来が決めるのは、溶接部の強さ(溶込み・欠陥の有無)、外観(余盛・アンダーカット)、歪みです。
■鍛冶工の仕事:図面・ケガキ・切断・組立・玉掛け
鍛冶工の仕事の中心は工作図を読むことです。部材の長さ、孔の位置、取付く部品の向きを図面から読み取り、鋼材にケガキをします。ケガキ機(当社では梁ロボ ケガキ名人)を使う工場では、機械が線を引き、人が確認して切断・孔あけに進みます。
切断はバンドソー(当社ではアマダ HK700)や自動ガス切断機、孔あけは直立ボール盤やアトラエース(磁石で鋼材に固定する穴あけ機)を使います。組立では、天井走行クレーン(当社は 2.8t × 5基)で部材を吊り、定盤の上で直角と反りを見ながら寸法どおりに仮組みします。
だから鍛冶工には玉掛けとクレーン運転の講習が要ります。身につくのは、寸法どおりに組む正確さと、その日の工場の流れを組み立てる段取りの力です。慣れてきたら、工程の管理や後輩の指導も鍛冶工の仕事になります。
■溶接工の仕事:開先の確認・本溶接・自主検査
溶接工は、鍛冶工が組んだ部材の開先と裏当て金のすき間を確認してから本溶接に入ります。CO₂半自動溶接機で、下向・横向の姿勢で層(パス)を重ねます。溶接が終わったら、溶接ゲージで脚長やサイズを測り、外観(余盛・アンダーカット・ビードの乱れ)を自分で確認して記録します。
1日の流れ、使う道具、資格の段階は関連記事「鉄骨の溶接工の仕事内容と1日」に詳しく書いています。
■要る資格・講習の違い

鍛冶工という職種名だけで一つの資格が決まるわけではなく、玉掛け、クレーン運転、ガス切断など実際に担当する業務ごとの資格・教育を確認します。また、高さ5m以上の建築物の骨組みなど法令の対象となる鉄骨の組立て等では、有資格者から作業主任者を選任します。作業員全員に作業主任者技能講習が必要、という制度ではありません。
アーク溶接等の特別教育は安全のための教育、JIS Z 3841の溶接技能資格は施工技量の資格です。SA-2F・SA-3Fは基本級、SA-3Hなどは専門級で、方法・板厚・姿勢に合う資格を確認します。未経験者は補助・練習から始め、製品の組立溶接にも必要な資格と技量を備えてから従事します。
これらの講習・資格は会社が受講させるのが通例です。当社では受験料・講習費を会社負担にし、資格の更新時期も会社で管理しています。
■未経験なら:組立の補助と溶接の練習から、担当範囲を広げる

未経験の場合は、切断・孔あけ・組立の補助と、指導下での溶接練習を通じて、両方の職種の仕事を学びます。練習材への仮付けと製品への組立溶接を区別し、製品の施工は必要な資格・技量を確認して任せます。
SA-3Fは厚板・下向の基本級です。日本溶接協会の基本級の受験条件は満15歳以上で1か月以上の習得。SA-3Hなどの専門級には、3か月以上の習得と対応する基本級が必要です。数字の2・3を基本級・専門級の区別と混同しないようにします。
寸法どおりに組む正確さや段取りを考えるのが好きなら鍛冶工、一つの技能を深めて数字(脚長・UT)で確かめたいなら溶接工に向いています。工場の中で両方の仕事を見てから、得意な方に寄っていけます。
■へむろ鉄工の場合(溶接工・鍛冶工を募集中)
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)は、国土交通大臣認定Mグレードの鉄骨製作工場で、溶接工・鍛冶工を正社員で募集しています。就業時間は 8:00〜17:00(日勤)、月給 176,000円〜330,000円(経験・資格による)、試用期間なし、資格取得支援あり(受験料・講習費は会社負担)、年間休日100日。現場に出るのは年に数回程度で、ほぼ工場の中の仕事です。
仕事内容・募集要項・応募方法は 採用情報(溶接工・鍛冶工の求人) にまとめています。工場見学だけのご連絡も歓迎です。
■おわりに
鍛冶工と溶接工は、同じ部材を前後で受け持つ2つの職種です。工程の流れと分担は建築鉄骨の一般的な製作工程、資格・講習は労働安全衛生法と JIS Z 3841 に基づく一般論で、就業条件は当社の募集要項の値です。物件ごとの製作条件は、設計図書と製作要領書が優先します。
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関連記事:
👉 鉄骨の溶接工の仕事内容と1日|鉄骨製作工場(Mグレード)で働くと何をするか
👉 梁の製作手順|H形鋼・ブラケット・ガセット
👉 柱の製作手順|角形鋼管・ダイアフラム・仕口
参考にした基準・資料:労働安全衛生法・同規則(特別教育・技能講習の区分)/JIS Z 3841(半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準)/鉄骨製作工場の性能評価基準(グレードごとの溶接技能者の資格)/株式会社へむろ鉄工 採用情報・会社案内 2026年9月改訂版(就業条件・設備)
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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資格区分の確認:日本溶接協会「半自動溶接」。製品の組立溶接の資格は、公共建築工事標準仕様書(令和7年版)7.6.3など、工事の適用仕様で確認します。(2026年9月28日改訂)
