■結論:溶接工の仕事は「開先の確認 → 仮付け → 本溶接 → 自分で検査」の繰り返し

鉄骨製作工場の溶接工の仕事は、建物の柱や梁になる鉄骨の部材を溶接でつなぐことです。ただし1日の中で「溶接している時間」だけが仕事ではありません。溶接の前に開先(溶かす溝)と裏当て金のすき間を確認し、鍛冶工が寸法どおりに組んだ部材を仮付けで固定し、本溶接を入れ、溶接が終わったら自分で外観と寸法を検査して記録します。
この「確認 → 仮付け → 本溶接 → 検査」を部材ごとに繰り返すのが溶接工の1日です。工程ごとに確認して記録する工場(国土交通大臣認定のMグレード工場など)では、この記録がそのまま製品の品質の証拠になります。
👉 経験者も、保有資格の有効期限・適用範囲と技量を確認して担当を決めます。未経験者は補助と練習から始め、必要な資格を取得して製品の組立溶接・本溶接へ進みます。溶接工自身の確認に加え、検査担当者が独立して製品を検査します。
■溶接工が作るもの:建物の柱と梁になる建築鉄骨
作っているのは、事務所・工場・倉庫・店舗などの骨組みになる鉄骨の柱・梁です。設計図から起こした工作図どおりに、次のような部材を製作します。
- 梁:H形鋼。両端にブラケットやガセットプレートを付け、ボルト孔やスリーブ孔を加工する
- 柱:角形鋼管(BCR295 など)やボックス断面。柱と梁をつなぐ通しダイアフラムを溶接で組み込む
- ベースプレート・ブラケット・スチフナ:柱脚や仕口まわりの部品
溶接工が担当するのは、これらの部材の本溶接です。柱の四面を溶接するときはロボット溶接を使う工場もありますが、梁の仕口やブラケット、ダイアフラムまわりは人の半自動溶接が中心です。部材ごとの作り方は関連記事「柱の製作手順」「梁の製作手順」に詳しく書いています。
■溶接工の1日(8:00〜17:00 の日勤の例)

鉄骨製作工場の溶接工は、基本的に日勤です。当社(株式会社へむろ鉄工・茨城県小美玉市)の場合の1日は次のとおりです。
- 8:00 始業・朝礼:その日の工程と安全のポイントを全員で確認
- 午前 製作:開先の確認・仮付け・本溶接。先輩と組んで作業
- 昼 休憩
- 午後 製作・検査:溶接の続きと、寸法・外観の確認。翌日の段取りも整える
- 17:00 終業:片付けと翌日の準備(時間外は月平均10時間)
現場(建方支援など)に出るのは年に数回程度で、ほぼ工場の中の仕事です。夜勤や交代制はなく、日曜が休みです。工場ごとに就業時間は違いますが、鉄骨製作工場の溶接工はこのような日勤の形が一般的です。
■使う道具と設備:溶接機だけでなく「測る道具」も自分のもの

溶接機はCO₂半自動溶接機です。ワイヤが自動で送られ、シールドガスで溶接部を守ります。被覆アーク溶接(手溶接)との違いは関連記事「半自動溶接と被覆アーク溶接の違い」にまとめています。
溶接機と同じくらい大事なのが測る道具です。溶接ゲージで脚長やサイズを、開先ゲージでルート間隔や角度を測ります。自分の溶接を自分の目と数字で確かめるのが、工場の溶接工の仕事の一部です。
当社の本社工場の設備(会社案内 2026年9月版)は、切断がバンドソー(アマダ HK700)と自動ガス切断機、孔あけ・ケガキが直立ボール盤・アトラエース・梁ロボ ケガキ名人、組立が天井走行クレーン 2.8t × 5基、溶接が CO₂半自動溶接機 7台、検査が超音波探傷器(UT)・溶接ゲージ・開先ゲージ・膜厚計です。
■資格の区分:SA-3Fは基本級、SA-3Hは専門級

半自動溶接の技能資格はJIS Z 3841に対応し、記号は方法・裏当て・板厚・姿勢を表します。SA-2FとSA-3Fは基本級、SA-3Hなどは専門級です。日本溶接協会では、基本級は満15歳以上で1か月以上の習得、専門級は満15歳以上で3か月以上の習得と対応する基本級を受験条件としています。同時受験などの詳細は最新案内で確認します。
鉄骨製作工場の性能評価基準では、工場のグレードごとに要る資格が決まっています。Mグレードなら SA-3F と SA-3H(厚板・裏当てあり・下向と横向)です。当社のMグレード認定書が定める溶接施工条件(下向・横向、板厚40mm以下)の範囲で本溶接を担当するのは、この有資格者です。
資格は仕事の幅と給与に直結します。当社では JIS 溶接技能者の資格を給与に反映し、受験料・講習費は会社負担です。資格には有効期限があるので、更新の時期も会社で管理しています。資格の詳しい読み方は関連記事「溶接技能者の資格と鉄骨工場で必要な人数」をご覧ください。
■経験者が活かせること、未経験者の覚え方
経験者は、図面を読む力、段取り、溶接技能と保有資格を確認して担当を決めます。半自動溶接や玉掛け・クレーン運転の経験は役立ちますが、設備や業務に合う資格であることと有効期限の確認が必要です。
未経験の方は、先輩の指導の下で切断・孔あけの補助、開先の確認、練習材への溶接を学びます。製品への組立溶接も、単なる無資格者の練習とは扱いません。適用仕様が求める資格と技量を確認し、工作図、溶接記号、寸法・外観の確認方法を覚えて担当範囲を広げます。
図面の記号の読み方は関連記事「溶接記号の読み方」、溶接の歪みの話は「溶接の歪みはなぜ出る?」が入口になります。
■へむろ鉄工の場合(溶接工・鍛冶工を募集中)
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)は、国土交通大臣認定Mグレードの鉄骨製作工場で、溶接工・鍛冶工を正社員で募集しています。雇用形態は正社員、就業時間は 8:00〜17:00(日勤)、月給 176,000円〜330,000円(経験・資格による)、試用期間なし、資格取得支援あり(受験料・講習費は会社負担)、年間休日100日、マイカー通勤可・無料駐車場ありです。
仕事内容・募集要項・応募方法は 採用情報(溶接工・鍛冶工の求人) にまとめています。「工場を見てみたい」だけのご連絡も歓迎です。
■おわりに
溶接工の仕事は、溶接そのものと、その前後の確認・検査・記録でできています。資格の段階(JIS Z 3841)と工場のグレードごとに要る資格は上の基準に基づく一般論で、就業条件は当社の募集要項の値です。物件ごとの溶接施工条件は、設計図書と溶接施工要領書が優先します。
鉄骨製作のご相談はお問い合わせからどうぞ。
関連記事:
👉 溶接技能者の資格(JIS Z 3841 SA-3F/3H など)と鉄骨工場で必要な人数
👉 鉄骨工場の「グレード」とは?J・R・M・H・S の違い
👉 建築鉄骨はどうやって作られる?図面から建方まで
参考にした基準・資料:JIS Z 3841(半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準)/鉄骨製作工場の性能評価基準(グレードごとの溶接技能者の資格)/一般社団法人 日本溶接協会(溶接技能者資格)/株式会社へむろ鉄工 採用情報・会社案内 2026年9月改訂版(就業条件・設備)
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
会社案内(設備・有資格者) / 製作実績 / 図面を送って相談する
資格区分の確認:日本溶接協会「半自動溶接」。製品の組立溶接の資格は、公共建築工事標準仕様書(令和7年版)7.6.3など、工事の適用仕様で確認します。(2026年9月28日改訂)
