鉄骨需要の推移と2026年の市況|統計の読み方と発注時の確認点【鉄骨ファブが解説】

資料確認日:2026年10月14日。年度の推移は日本鉄鋼連盟の2026年6月資料、足元の動きは国土交通省の2026年8月分統計を参照しています。


■結論:需要の減少と、個別工事の条件を分けて読む

2026年の市況を見る3つの窓
需要の流れ2025年度の鉄骨需要推計
342.0万t・前年度比6.5%減
足元の動き2026年8月の着工統計
用途ごとの増減を確認
工事の条件材料・製作・検査・運搬
個別の仕様と工程で確認
全国統計は市場を見るための資料。個別の見積や納期を直接決める数値ではありません。

鉄骨の仕事量を知るときは、全国の需要の傾向と、目の前の工事の製作条件を分けて考えることが大切です。全国で需要が減っていても、必要な鋼材や工場の工程が希望どおりに確保できるとは限りません。

日本鉄鋼連盟の資料では、2025年度の鉄骨需要量は342.0万t、前年度比6.5%減という推計です。2022年度から4年続けて減少しています。これは2026年度の実績ではなく、2025年4月から2026年3月までを対象にした数字です。[1]

この記事では、需要推計の意味、年度ごとの変化、2026年に公表された着工・労務の資料、発注や製作の相談で確認したい点を整理します。将来の価格や受注量を予測する記事ではありません。


■鉄骨需要量とは:出荷重量ではなく、床面積からの推計

日本鉄鋼連盟の推計方法
S造(鉄骨造)着工床面積 × 100kg/㎡
SRC造着工床面積 × 50kg/㎡
合計を集計上記を合算し重量に換算
実測した出荷量とは別
出典:日本鉄鋼連盟「鉄骨建築関連統計・図表」2026年6月、p.4の注記。

「鉄骨需要○万t」という見出しを見ると、全国の工場が実際に出荷した重量を集計した数字だと思うかもしれません。しかし、ここで使う日本鉄鋼連盟の数字は、国土交通省の建築着工統計をもとに換算したものです。

同資料のp.4には、鉄骨造の床面積に100kg/㎡、鉄骨鉄筋コンクリート造の床面積に50kg/㎡を掛けるという推計方法が示されています。この方法を共通のものさしにして、年度ごとの市場規模を比べます。[1]

したがって、この係数をそのまま個別物件の鋼材発注量や見積数量に使うことはできません。実際の建物では、柱・梁の断面、階数、スパン、構造形式、接合部などによって鉄骨の量が変わります。図面から拾う重量と、統計上の需要推計は用途の異なる数字です。

また、着工の時期、工場で製作する時期、出荷する時期は同じとは限りません。市場の増減を把握する資料として読み、自社や依頼先の月々の稼働状況とは区別します。


■需要の推移:2022~2025年度は4年連続で減少

鉄骨需要量の推計:2021~2025年度

棒の共通尺度:左端0、右端500万t。各年度の値を併記しています。

2021年度465.6万t
2022年度431.6万t
2023年度391.0万t
2024年度365.8万t
2025年度342.0万t
出典:日本鉄鋼連盟「鉄骨建築関連統計・図表」2026年6月、p.4。原表の千tを万tに換算。実際の出荷重量ではなく、着工床面積からの推計値です。

同じ資料・同じ推計方法で見ると、2021年度は465.6万t、2022年度は431.6万t、2023年度は391.0万t、2024年度は365.8万t、2025年度は342.0万tとなっています。[1]

この並びから確認できるのは、2021年度から2025年度までの間に、全国の鉄骨需要推計が段階的に縮小していることです。一方、この数字だけでは、特定の地域や規模の工事が同じ割合で減ったとは言えません。

鉄骨ファブにとっては、重量の合計だけでなく、扱う建物の種類や部材構成も仕事量に関わります。全国の需要推計が減少したことを、そのまま「どの工場にも空きがある」「どの工事も短納期にできる」という判断へつなげないことが重要です。


■2026年の足元:8月の着工統計は用途で動きが違う

数字を比べる前に、期間をそろえる
2025年度2025年4月~2026年3月
年度全体の推移を見る
2026年8月分1か月の着工動向
前年の同じ月と比較
2026年通年2026年1月~12月
10月14日時点では途中
年度・暦年・月次を混ぜず、統計の対象期間を必ず確認します。

国土交通省が2026年9月30日に公表した2026年8月分では、民間非居住建築物の着工床面積は前年同月に比べ全体として減少しています。用途別では事務所が増加し、店舗・工場・倉庫が減少したと説明されています。[2]

ここでの対象は民間非居住建築物です。鉄骨造だけの需要重量を示すものではなく、前章の「年度の鉄骨需要推計」とは指標も期間も異なります。たとえば着工床面積の増減を、そのまま鉄骨重量の増減率として書き換えることはできません。

月次統計は足元の変化を知るのに役立ちますが、1か月だけの動きで年間の方向まで決めつけないようにします。複数月の推移を追うときも、用途・地域・構造の範囲をそろえて比較するのが基本です。

2026年の暦年・年度のどちらも、この記事の確認日時点では通年を終えていません。過去の年度推計と現在の月次動向を分けることで、確認できた実績と今後の見通しを混同せずに読めます。


■市況の見方:需要の量と、費用を決める要素は別

需要統計だけでは決まらないもの
材料の条件鋼種・寸法・数量
必要な時期・調達条件
製作の条件部材数・加工・溶接
検査・塗装の範囲
施工の条件輸送・揚重・建方
工程と施工範囲
一般的な整理です。個別工事の見積・納期・取引条件を示すものではありません。

需要が減ったというニュースと、製作費や工事費が下がるという話は分けて確認する必要があります。材料の手配、加工や溶接の手間、検査、輸送、現場の条件など、個別工事の費用には複数の要素が関わるためです。

労務の公的な指標として、国土交通省は2026年2月17日、同年3月から適用する公共工事設計労務単価を公表しています。改定は全国全職種単純平均で前年度比4.5%の引上げです。[3]

これは公共工事の積算に使う労務単価の指標であり、鉄骨工場の全従業員の賃金や、個々の鉄骨工事の見積が一律に4.5%変わるという意味ではありません。統計の用途を理解したうえで、費用に関する背景資料の一つとして扱います。

鋼材についても、メーカーの公表価格、流通段階の条件、実際の購入条件は同じとは限りません。この記事では個別の価格金額や将来の値動きは示さず、工事ごとの見積と手配条件で確認するという考え方にとどめます。


■発注・製作の相談で確認したい4つのこと

市場の情報から、個別工事の確認へ
①図面・仕様対象部材と工事範囲を共有
②材料鋼種・寸法・数量を確認
③工程承認・製作・検査を整理
④出荷・建方搬入時期と現場条件を調整
相談時の一般的な確認の流れ。実際の順序・分担は工事ごとに調整します。

市場の情報を工事の相談につなげるときは、「需要が減っているから」といった全体論だけで判断せず、必要な条件を具体的にそろえると話を進めやすくなります。一般的な確認項目は次のとおりです。

  • 図面と仕様:構造図・特記仕様、対象部材、製作のみか建方までかなど、依頼する範囲を明確にする
  • 材料:鋼種・断面・板厚・数量と必要時期を確認し、未確定の項目を区別する
  • 工程:工作図の承認、材料入荷、製作、検査、塗装・めっきの条件を関係者と確認する
  • 出荷と現場:希望搬入日、分割搬入の有無、運搬や建方の条件を共有する

見積を比較する場合も、含まれる作業や検査、運搬の範囲が違えば、同じ総重量でも条件はそろいません。市況の数字で一律に判断するより、前提をそろえたうえで依頼先と確認することが大切です。

これらは一般的な相談のポイントであり、当社の見積有効期限、受注条件、納期や価格を保証するものではありません。具体的な条件は個別のご相談で確認します。


■統計を読み違えないための確認リスト

読む前の4項目
いつの数字か公表日と対象期間
何を数えたか重量・床面積・金額
どこまで含むか全国・地域・構造・用途
どんな数字か実績・推計・予測
同じ単位・期間・集計範囲をそろえると、比較の意味が明確になります。

市場の資料を読むときは、まず公表日と対象期間を見ます。2026年に出た資料でも、その中身は2025年度や2025暦年の集計である場合があります。次に、数えているものが重量なのか床面積なのかを確認します。

そのうえで、全国の合計なのか、特定の用途・構造・地域の数字なのかを確認します。最後に、実際に観測した数値、一定の係数を使った推計、将来の予測を区別します。

資料には後日の訂正や更新があり得るため、引用する際は資料名・公表時期・該当する表を残します。需要統計は市場を理解するための共通資料として使い、個別工事は図面・仕様・工程と合わせて判断するのが基本です。


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■参考にした基準・資料

資料確認日:2026年10月14日。各数値は上記資料の対象期間・集計方法に従っています。最新の訂正情報は公表元でご確認ください。

個別の物件は設計図書と監理者の指示が優先します。鉄骨製作のご相談はお問い合わせからどうぞ。