図面の確定から数量の拾い・手配・入荷・保管までの5段階を示した図

鋼材の発注から入荷まで|定尺・切板・ミル納期【鉄骨ファブが解説】


■結論:決めるのは「何を・どの形で・いつ」

図面の確定から数量の拾い・手配・入荷・保管までの5段階を示した図
鋼材の手配は図面が固まるところから始まる

鉄骨製作で最初に動くのが鋼材の手配です。流れは 図面の確定 → 数量の拾い → 手配 → 入荷 → 保管・加工 の 5 段階。決めることは大きく 3 つです。

  • 何を:鋼種(SN400B・SN490B・BCR295 など)と断面(H-400×200×8×13 のように 4 つの数字まで)
  • どの形で:定尺のまま買うか、切板にするか。数量と加工のロスをどう見るか
  • いつ:工場に入っていないと工程が回らない時期から逆算する

👉 大事なのは、この 3 つは図面が固まらないと決まらないということです。断面が動けば重量も手配先も変わります。「安く買う」工夫はその後の話になります。

この記事では、定尺と切板の考え方、ひも付き・店売りと納期、ミルシート(検査文書)の種類、入荷時に確かめることを順に整理します。


■定尺(ていじゃく)とは:規格で決まっている標準の寸法

形鋼の標準長さと鋼板の標準寸法をまとめた図
定尺=標準寸法のまま、切らずに買う買い方

「定尺」とは、規格で決められた標準寸法のまま買うことをいいます。

  • 形鋼:標準長さは 6.0・7.0・8.0・9.0・10.0・11.0・12.0・13.0m の 8 種類(JIS G 3192 表2)。長さの許容差は 7m 以下で +40mm/-0mm、7m を超えると 1m ごとにプラス側へ 5mm 加わる(マイナス側は 0)
  • 鋼板:標準の厚さ・幅・長さが表で決まっている(JIS G 3193 表1〜表3)。鋼板の標準幅は 914mm・1,219mm 及び 1,400mm 以上で、標準長さは鋼帯からの切板には適用しない

質量の出し方も規格で決まっています。形鋼は断面積(呼称寸法から計算)に 0.785(断面積 1cm²・長さ 1m の質量)を掛け、鋼板は 7.85(厚さ 1mm・面積 1m² の質量)に厚さと面積を掛けます。重量の計算はH形鋼の寸法の読み方にまとめています。

👉 定尺のまま使えるなら、切断の手間も切り落としも出ません。いちばん安く、いちばん速い買い方です。ただし梁が 9.4m のときに 10m の定尺を買えば 600mm が余ります。これがロス(端材)になります。

鋼板には縁の処理の違いもあります。圧延したままの縁がミルエッジ、切ってそろえた縁がカットエッジで、幅の許容差も厚さの測定位置も変わります。


■定尺か、切板か:歩留りと手間のどちらを取るか

定尺で買う場合と切板で買う場合の違いと、それぞれが向く場面を並べた図
単価だけでは決まらない
  • 定尺が向くとき:同じ長さの部材がまとまってある/自社に切断設備がある/端材を他の部材に回せる/納期が短く在庫から引きたい
  • 切板が向くとき:板から取る部材(ガセット・ベースプレートなど)/厚板で自社で切ると歩留りが悪い/同じ形が大量にある/工場の切断能力を他の工程に回したい

切断の方法そのものは鋼材の切断にまとめています。ここで押さえておきたいのは、ロス材はスクラップとして売却されるということです。

公共工事では、鋼材の値上がりを精算する単品スライド条項で、加工によるロス分も設計数量(設計図書の数量 ×(1+ロス率))までは対象にできます。ただしロス分を対象にするときは、売却するスクラップも対象材料に含めて計算することになっています。ロスを「損」だけで見ない考え方が制度にも表れています。

👉 どちらが得かは単価だけでは決まりません。切断の手間・納期・端材の使い道まで含めて考えます。


■納期:いつ契約すると、いつ入るのか

ひも付きと店売りで価格が決まる時期を比べた表
鋼材は注文したらすぐ来るものではない

国土交通省の資料には、鋼材類の販売形態ごとに価格が決まる時期がはっきり書かれています。

  • ひも付き(メーカー手配):製造・圧延の予定を含めて納期を確認する。旧資料の「おおむね2か月前」は購入契約時期の説明で、現在の標準納期を保証する数値ではない
  • 店売り(問屋・商社在庫):在庫寸法・数量・加工・運送の可否を確認する。旧資料の「おおむね1か月以上前」を、一律に必要な待ち日数とは扱わない

つまり、鋼材は「注文したら明日来る」ものではありません。工程表は入荷の時期から逆算して組みます。工程の組み方は鉄骨製作の工程表の作り方を参照してください。

納期に効くのは、汎用品かどうか(流通量の少ない断面は在庫から引けずミル手配になることがある)、鋼種(SN材・BCR・BCP など建築構造用の指定があるものは代替がききにくい)、切板や開先加工を頼むか(その分の日数が上乗せになる)といった条件です。

なお、鉄骨製作用の鋼材は工事現場ではなく工場に直接搬入されます。公共工事の精算でも、この場合の「搬入時期」は工場に搬入される時期とされています。


■ミルシート(検査文書):指定がなければ「検査証明書3.1」

JIS G 0415 の検査文書の種類(2.1・2.2・3.1・3.2)を並べた表
検査文書には種類がある

現場で「ミルシート」と呼んでいる書類は、規格では検査文書といいます。JIS G 0415 で種類が決められていて、誰が確認したかで区分されます。

  • 2.1 注文合格書(随時検査):試験結果は書かず、要求内容への適合を表明。確認は製造業者
  • 2.2 試験報告書(随時検査):試験結果を記載。確認は製造業者
  • 3.1 検査証明書3.1(受渡検査):試験結果を記載。製造部門から独立したオーソライズされた代表が確認
  • 3.2 検査証明書3.2(受渡検査):試験結果を記載。製造業者の代表と、購入者の代表または第三者検査員が確認

「随時検査」は同じ製造工程で作られた製品が注文の要求内容に合格するかを製造業者が自分の手順で検証するもの、「受渡検査」はその出荷品そのもの(またはそれを含む試験単位)を受渡し前に検証するものです。

👉 JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)では、「製造業者は、特に指定のない限り、検査文書を注文者に提出しなければならない」とし、注文時に特に指定がない場合の種類は「検査証明書3.1」と決められています。工事の仕様でそれ以上のものが求められる場合は、注文のときに指定が必要です。

検査証明書に何が書かれ、どう読むかはミルシートの見方にまとめています。


■入荷したら:表示を確かめて、識別を切らさない

鋼材に表示される項目と、受入で確かめることを並べた図
溶鋼番号がつながっていれば、後から追える

JIS G 3101 では、検査に合格した鋼材に 鋼材ごと、または 1 結束ごとに次の項目を表示することとされています。

  • 種類の記号(SS400・SN490B など)
  • 溶鋼番号 または 検査番号
  • 寸法
  • 結束ごとの数量または質量(鋼板及び鋼帯の場合)
  • 製造業者名またはその略号

受入では、この表示と検査証明書の溶鋼番号が合っているか、注文どおりの鋼種・断面・長さ・数量か、曲がりやきずが規格の範囲かを確かめます。

👉 実務で効くのは「識別を切らさない」ことです。鋼材は切断すると短くなり、表示のある部分が落ちてしまうことがあります。切る前に工場側の管理番号へ転写しておかないと、ミルシートはあっても「どの部材がどのロットか」を示せなくなります。

屋外で保管する場合は、錆と水たまりにも注意します。受入の記録(いつ・何を・どれだけ・どのロット)は、検査記録と一緒に残します。


■手配でつまずきやすいところ

  • 図面の断面が「H-400×200」までしか決まっていない。4 つの数字がそろわないと重量も手配先も決まらない
  • 鋼種が書かれていない。SN400B か SN490B かで材料も価格も変わる(SS400・SM490・SN400・SN490 の違い)
  • 汎用品以外の断面を使っている。在庫から引けず、ミル手配になって納期が伸びることがある
  • 定尺で取れる割り付けを検討していない。長さの組合せを変えるだけで端材が減ることがある
  • 検査文書の種類を注文時に指定していない。仕様で 3.2 が要るのに 3.1 で入ってしまう
  • 入荷後に識別を転写していない。トレーサビリティが切れる

どれも「安く買えなかった」より先に起こる問題です。図面が固まり、割り付けが決まり、鋼種と検査文書の指定がそろっていること。それが鋼材手配の前提になります。


■まとめ

  • 鋼材の手配で決めるのは「何を・どの形で・いつ」。どれも図面が固まらないと決まらない
  • 形鋼の定尺は 6.0〜13.0m の 8 種類(JIS G 3192 表2)。長さの許容差はプラス側だけ
  • 鋼板は標準の厚さ・幅・長さが規格の表で決まっている(JIS G 3193)。標準幅は 914・1,219 及び 1,400mm 以上
  • 質量の計算は規格どおり。形鋼は 0.785 × 断面積(cm²)、鋼板は 7.85 × 厚さ × 面積
  • 定尺は安くて速いが端材が出る。切板は端材が減るが加工賃と納期がかかる
  • ロス材はスクラップとして売却される。公共工事の精算でもスクラップを計算に含める
  • 鋼材の納期は在庫、圧延予定、寸法・数量、加工・物流で変わる。古い資料の購入契約時期を、現在の標準納期や価格確定時期として流用しない
  • ミルシート(検査文書)は JIS G 0415 で 2.1・2.2・3.1・3.2 に分かれる
  • 注文時に指定がなければ「検査証明書3.1」(JIS G 3101 箇条13)
  • 鋼材には種類の記号・溶鋼番号・寸法・数量・製造業者が表示される。切る前に識別を転写する

■参考にした基準・資料

この記事の数値と用語は、次の基準・資料にもとづいています。物件ごとの鋼種・寸法・検査文書の指定は、設計図書と工事仕様書が優先します。

  • JIS G 3101『一般構造用圧延鋼材』:箇条7(形状,寸法,質量及びその許容差は JIS G 3191〜3194 による)、箇条9.2.2(試験片の数。同一溶鋼・同一断面で一組、一組の質量が 50t を超えるときは 2 個)、箇条10(検査の一般事項は JIS G 0404)、箇条12(表示:種類の記号・溶鋼番号または検査番号・寸法・結束ごとの数量または質量・製造業者名)、箇条13(報告:特に指定のない限り検査文書を提出。注文時に指定がない場合は JIS G 0415 の検査証明書3.1)
  • JIS G 3192『熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差』:表2(標準長さ 6.0〜13.0m)、表4(H形鋼の許容差。長さは 7m 以下で +40/-0)、表6(質量の計算方法。基本質量 0.785kg/cm²・m)
  • JIS G 3193『熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差』:表1(標準厚さ)、表2(標準幅。鋼板は 914mm・1,219mm 及び 1,400mm 以上)、表3(標準長さ。鋼帯からの切板には適用しない)、表7(幅の許容差)、表12(質量の計算方法。基本質量 7.85kg/mm・m²)、ミルエッジとカットエッジの区分
  • JIS G 0415『鋼及び鋼製品-検査文書』:表1(2.1 注文合格書、2.2 試験報告書、3.1 検査証明書3.1、3.2 検査証明書3.2)、随時検査・受渡検査の定義
  • JIS G 0404『鋼材の一般受渡し条件』:検査の一般事項、報告
  • 国土交通省『工事請負契約書第25条第5項(単品スライド条項)運用マニュアル(暫定版)』(平成20年7月16日):2-2(対象数量。設計数量=設計図書の数量×(1+ロス率)、ロス分を対象にするときはスクラップも対象材料とする)、2-4-2 ①(ひも付きは納入のおおむね2か月前、店売りは1か月以上前に購入契約。工場に直接搬入される場合の搬入時期は工場に搬入される時期)
  • 手配の実務上の注意(割り付け・識別の転写・保管)は、鉄骨製作の一般的な考え方として整理したものです(当社固有の手順や取引条件ではありません)

■おわりに

鋼材の手配は、単価の交渉より前に決まっている部分が大きい仕事です。図面が固まり、割り付けが決まり、鋼種と検査文書の指定がそろっていれば、あとは納期から逆算して押さえるだけになります。逆に、図面が動いているうちは何度でもやり直しになります。

株式会社へむろ鉄工は、建築鉄骨の製作(Mグレード認定工場)を行っています。図面の読み取りから材料の手配・加工・溶接・検査まで一貫して対応していますので、鉄骨製作のご相談・お見積りはお問い合わせからどうぞ。図面(PDF・DXF)を添えていただければ、より具体的にご返事できます。これまでの製作実績もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた会社
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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