■結論:DXはデジタル技術で仕事を変える取組。ここでは3つの道具を紹介

DXは、データとデジタル技術を活用して業務や組織、ビジネスモデルを変革し、競争力を高める取組です。この記事では、鉄骨製作でその取組を支える道具の例として、次の3つを取り上げます。
- BIM:3次元モデルに部材の情報(材質・断面・数量など)を持たせる手法
- NCデータ:工作図・現寸の寸法を、加工機が読める数値に変換した情報
- 工程管理ソフト:材料の入荷から出荷までの進み具合とロットを記録・共有する道具
👉 どれも図面・部材・工程の情報をデータとして扱い、活用するための道具です。導入によって作業の手間や誤りの伝わり方も変わるため、データの作成・照査と運用方法の見直しが必要です。
この記事では、それぞれの仕組みと、工作図の承認のように変わらない手続き、中小規模の工場で導入するときに実際に出てくる壁を順に整理します。
■BIMとは何か|3次元モデルに部材の情報を持たせる

BIM(Building Information Modeling)とは、建物の形状を3次元で表すだけでなく、部材ごとに材質・断面・数量などの情報を持たせてモデル化する手法です。
- 3次元の形状情報:部材の位置・大きさ・取合いを立体で確認できる
- 属性情報:材質・断面・数量・仕様などを部材に紐づける
- 関係者間での共有:設計者・施工者・工場が同じモデルを参照できる
設計から施工、維持管理まで同じモデルを使い続けることで、図面間の食い違いや転記ミスを減らすことがねらいとされます。
ただし、鉄骨工事では構造設計のBIMモデルが、そのまま工場の工作図と一致しているとは限りません。工場側では、受け取ったモデルやデータを、工作図・現寸データに合わせて作り直す作業が必要になる場合が多くあります。
■工作図・現寸との関わり|BIMがあっても手順は変わらない

鉄骨工場は設計図・構造図をもとに工作図(製作図)を描き、工事監理者の承認を得てから製作に入ります。承認された工作図から現寸データを作り、そこから切断・孔あけの情報を取り出す流れは、製作図(工作図)で決まること|寸法ミスの原因トップ5で書いたとおりです。
- 工作図:設計図書をもとに、寸法・板厚・材質・開先・ボルト・符号を決める図面(JASS 6 4.1)
- 現寸:工作図の寸法を実物の大きさで確認し、切断・孔あけの情報を作る工程
- BIMモデル:工作図を描く・検討するための3次元の材料。それ自体は製作の承認図ではない
👉 BIMモデルが入口にある場合でも、この「工作図の承認」という手続きは変わりません。モデルの情報は工作図を描く・確かめるための材料であり、モデルがあるからといって承認の手順が省けるわけではありません。
■NCデータとは|工作図から加工機への情報の流れ

NC(数値制御)データとは、工作図・現寸で決まった寸法を、切断機や孔あけ機が読み取れる数値の情報に変換したものです。CAD/CAMで作った加工データをNC加工機に流すことで、切断・孔あけを自動で行えます(現図・ケガキ|デジタルとアナログの両立)。
- CAD/CAM:工作図・3Dモデルから加工データを作る
- NC切断:切断線の情報をもとに、プラズマ・レーザー・ガスで自動切断する
- NC孔あけ:孔の位置情報をもとに、自動で穴をあける
- 自動マーキング:部材符号や基準線を機械が書く
👉 自動化で精度と速度は上がりますが、元になるデータ(工作図・現寸)が間違っていれば、その間違いのまま速く・正確に加工されてしまいます。データを照査する工程は、自動化が進んでも省けません。
■工程管理ソフトと部材のトレーサビリティ

鉄骨製作は、材料の入荷から、加工・組立・溶接・検査・塗装・出荷まで、一つの部材が多くの工程を順に通っていきます(鉄骨製作の工程表の作り方|材料入荷から出荷まで)。
- 進捗の記録:部材ごとに、どの工程が完了したかを記録する
- 共有:現場・工場・発注者が同じ進捗を参照できる
- 検査記録とのひも付け:検査結果やロット情報を部材に結びつける
工程管理ソフトは、紙の工程表や掛け札で管理してきたことを、データで追えるようにする道具です。「何を・いつ・どのロットで」残すかという基本は、道具を紙からデータに変えても変わりません。
■QRコード・バーコードによる部材管理

部材が増えると、どの部材がどの工程まで進んだかを目で追うのが難しくなります。部材や管理票にQRコード・バーコードを付け、工程ごとに読み取ることで、進捗やロットを記録する方法が広がっています。
- 部材ごとの符号とQRコード・バーコードを一対一で結びつける
- 入荷・加工・溶接・検査・出荷など、工程の節目で読み取り、記録を残す
- 溶鋼番号や検査結果など、ほかの記録と結びつけて追えるようにする
👉 コードを読み取る運用を現場に定着させることが、仕組み自体を作ることより難しい場合が多いのが実際のところです。読み取り忘れ・貼り忘れといった小さな抜けが、記録の欠落につながります。
■導入の壁|データ形式・コスト・人材

BIM・NCデータ・工程管理ソフトは、どれも導入すれば自動的に効果が出るわけではありません。実際に出てくる壁は、おおむね次のようなものです。
- データ形式の違い:設計側のBIMソフトと、工場側のCAD/CAM・現寸システムで、データの形式や詳細度が揃わないことがある
- 初期コストと運用コスト:ソフト・設備の導入費に加え、データを作る・直す人の手間がかかる
- 既存の仕組みとの併存:紙の工作図・現寸・掛け札による管理を、すぐに全部置き換えられるわけではない
- 人材:データを作り、確認し、誤りに気づける人を育てる時間がかかる
中小規模の工場ほど、専用システムの導入コストや、データを扱える人材の確保が負担になりやすいのが実際のところです。全工程を一度に置き換えるより、効果の大きい工程から段階的に取り入れる考え方が現実的です。
■まとめ:デジタルの道具を活用し、工程や仕事を改善する

- DXは業務や組織等を変革する取組であり、BIM・NCデータ・工程管理ソフトは、そのために活用できる道具の例
- BIMは3次元モデルに部材情報を持たせる手法。工作図を描く・検討するための材料であり、承認手続きを省くものではない
- NCデータは工作図・現寸の寸法を加工機に伝える情報。元データの照査は自動化後も必要
- 工程管理ソフトやQRコード・バーコードは、進捗とロットを記録・共有する道具。紙の管理の基本的な考え方は変わらない
- 導入の壁はデータ形式・コスト・人材。段階的な導入が現実的
株式会社へむろ鉄工(茨城県小美玉市)。国土交通大臣認定 Mグレードの建築鉄骨製作工場です。工作図・現寸(REAL4)から製作・検査・出荷まで社内で行い、製作のみ・建方込み・協力工場としての製作分担のいずれの形でも、茨城県内と関東圏を中心に受けています。
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■参考にした基準・資料
この記事は、鉄骨製作における工作図・現寸・NCデータ・工程管理の一般的な考え方を整理したものです。BIM・NCデータ・工程管理ソフトの具体的な機能や導入手順は、使用するソフトウェア・システムの仕様によって異なります。
- 日本建築学会『建築工事標準仕様書・同解説 JASS 6 鉄骨工事』4.1「工作図と現寸」:工作図の承認、現寸図の一部または全部の省略
- 愛知県建築局建築指導課『鉄骨造建築物品質適正化のための取扱い要領・同解説』(令和6年4月)第5 受入れ検査(工作図等の審査)
- 建築研究所『鉄骨造建築物の品質管理』第3章 品質管理表(工作図の管理項目)
- BIM・NCデータ・工程管理・QRコード管理の用語と仕組みは、建築・製造分野で一般に使われている定義・考え方にもとづく一般的な整理です
個別の物件でどの図面・データ形式を使うかは、設計図書と工事監理者の指示が優先します。鉄骨製作のご相談・お見積りは、お問い合わせからどうぞ。
