■結論:「2サイズアップ」は目安。必要な板厚は設計と納まりで決まる

角形鋼管(コラム)の柱に H形鋼の梁を取り付けるとき、柱を切って挟む鋼板が通しダイアフラムです。梁フランジはこのダイアフラムに突き合わせて溶接します。設計図を見ると、ダイアフラムの板厚は梁フランジより厚く、多くは「2サイズアップ」(例:フランジ 16mm → ダイアフラム 22mm)になっています。
厚さに余裕を設ける理由は、梁フランジをダイアフラム厚さの範囲内で溶接する納まり、製作・建方の誤差、必要な応力伝達です。「同厚なら必ずはみ出す」「2サイズ増せば必ず安全」とは限りません。接合詳細と必要耐力を設計で確認します。
建築研究所の資料は「通しダイアフラムの板厚は梁フランジの最大厚の 2サイズアップが望ましい」「内ダイアフラムは 1サイズアップが望ましい」としています。日建連の鉄骨工事 Q&A も、通しダイアフラムは 2サイズアップ(3サイズの場合もあり)、内ダイアフラムは 1サイズアップの指定が多い、と説明しています。
👉 「厚い=安全側」ではありません。はみ出さないため、力を流すための厚さです。厚くしすぎると基準強度の低下・溶接量・拘束といった別の問題が出ます。この記事では、2サイズの数え方、3つの理由、内ダイアフラムとの違い、厚板のときの注意を順に説明します。
■「2サイズアップ」とは:鋼板の呼び厚さを2段上げること

建築でよく使う鋼板の厚さは、6・9・12・16・19・22・25・28・32・36・40mm のように飛び飛びに決まっています(呼び厚さ)。「2サイズアップ」はこの並びで2段上げることで、mm で言えば 6〜8mm 厚くなります。
対応の例:梁フランジ 12mm → 19mm、16mm → 22mm、19mm → 25mm、22mm → 28mm、25mm → 32mm、28mm → 36mm。内ダイアフラムの「1サイズアップ」なら 16mm → 19mm です。
なぜ「+6mm」ではなく「2サイズ」と言うのか。市中にある厚さで指定すれば注文しやすく、図面と現物の取り違えも起きにくいからです。設計図に「ダイアフラム PL-22」と書いてあれば、工場はその厚さを手配します。
■理由①:法令。梁フランジは「通しダイアフラムの厚みの内部」で溶接する

建築基準法にもとづく建設省告示第1464号は、柱とはりの仕口について「通しダイアフラムとはりフランジの溶接部にあっては、はりフランジは通しダイアフラムを構成する鋼板の厚みの内部で溶接しなければならない」と定めています。梁フランジがダイアフラムの上下からはみ出した状態で溶接してはいけない、ということです。
同じ告示は、ダイアフラムと梁フランジの「ずれ」の上限も決めています。ダイアフラムの厚さがフランジ以下ならフランジ厚の 1/5 以下かつ 4mm 以下、フランジより厚ければフランジ厚の 1/4 以下かつ 5mm 以下です。ダイアフラムが厚いほうが、ずれの余裕が少し大きくなります。詳しくは食違い(目違い)の許容値の記事にまとめています。
もしダイアフラムと梁フランジが同じ厚さなら、1mm ずれただけで「厚みの内部」から外れます。だから設計の段階で、はみ出さない余裕を板厚に持たせておきます。上限を超えた場合は、告示のただし書きにより必要な耐力以上になる補強を行えば認められますが、それは最後の手段です。
■理由②:製作誤差を見込み、梁フランジのはみ出しを防ぐ

工場の目線で見ると、ずれの原因はいくつもあります。H形鋼のフランジ厚と梁せいには JIS の寸法許容差があり、梁せいが 2mm 違えばフランジの位置もその分ずれます。柱の切断長は、柱を切ってダイアフラムを挟む構造なので、そのままダイアフラムの高さの誤差になります。
ダイアフラムと角形鋼管の溶接では、収縮や角変形が生じることがあります。変形量は板厚・入熱・拘束・施工順序によって変わるため、一定の数mmと決めつけず、組立時と溶接後の測定で確認します。
裏当て金の重なりや初層の施工性も板厚差を検討する要素です。ただし、必要な重なり寸法と板厚差は開先・裏当て金の詳細によるため、片側3〜4mmをすべての接合に一律適用するものではありません。
内ダイアフラムは、柱の内側に入れる板なので梁フランジとの「ずれ」を告示の範囲で許容でき、1サイズアップで足りることが多いとされています。通しダイアフラムは「厚みの内部」という厳しい決まりがあるので、2サイズ以上が目安です。
■理由③:力の伝達と接合部の耐力を確保する

ダイアフラムは梁フランジの力を柱へ伝えます。必要な厚さは、材料強度、柱・梁の寸法、接合部の耐力と変形、納まりを踏まえて設計します。「公式の設計式がないから一律2サイズ」とは説明できません。採用する設計規準・接合形式に対応する検討結果を確認します。
力の向きにも注意が要ります。柱のスキンプレートからダイアフラムへは、板厚方向(Z方向)に引張力が入ります。圧延鋼板は板厚方向の性能が弱く、内部の介在物を起点に層状に割れるラメラテアが起きることがあります。
板厚方向の引張応力や溶接時の拘束が問題となる場合は、厚さ方向特性を規定するSN材C種などを検討します。ただし材質は接合詳細と必要性能に基づく指定によるため、柱がBCR295なら必ずSN490Cと機械的に決めず、設計図書を確認します。
板厚が40mmを超えると、鋼種によって基準強度Fの区分が変わります。TMCP鋼などを採用する場合もありますが、一律に必須ではありません。使用材のF値、厚さ方向特性、溶接量・拘束、施工可能範囲を合わせて検討します。
■まとめ:通しダイアフラムの板厚と材質の決め方

- 通しダイアフラムの板厚は、梁フランジの最大厚の 2サイズアップ(16→22、19→25、22→28 など)が目安。内ダイアフラムは 1サイズアップ
- 理由①:告示1464号。梁フランジは通しダイアフラムの厚みの内部で溶接する。ずれの上限は t/5 かつ 4mm(ダイアフラムが厚ければ t/4 かつ 5mm)
- 製作・建方の誤差や溶接変形、裏当て金の納まりを見込んで、梁フランジがダイアフラムの厚さの範囲に収まるよう管理する
- 梁フランジからの面内の力の伝達と、柱側の接合・溶接による板厚方向の作用を区別し、必要な厚さと材質を確認する
- 出寸法・板厚・材質は接合詳細と設計図書で確認。厚板は基準強度Fの区分や溶接施工条件にも注意する
- 設計図でダイアフラムがフランジと同厚・1サイズ差のときは、製作前に質疑で確認する。工場は組立時に測って、溶接前に直す
■参考にした基準・資料
- 建設省告示第1464号「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件」(平成12年5月31日)第二 二 イ(1)(2):通しダイアフラムとはりフランジの溶接位置、ダイアフラムとフランジのずれの上限(国土交通省 告示 PDF、2026-09-15 確認)
- 建築研究所『建築研究資料 No.143 全鋼構造建物の耐震設計ディテーリング標準化への取組』(2013年3月)第2章「角形鋼管柱を用いた柱梁接合部」:通しダイアフラム 2サイズアップ、内ダイアフラム 1サイズアップ、材質 SN材 C種、出寸法 25/30mm、40mm 超の F値
- 日本建設業連合会 鉄骨工事 Q&A A-3-12「通しダイアフラム板厚と内ダイアフラム板厚の決定基準は何故違うか?」(2016年7月改訂)
- 日本鉄鋼連盟 BCR/BCP Q&A(設計)Q2-10「通しダイアフラムの鋼種」・Q2-11「梁フランジ 40mm のとき通しダイアフラムは 50mm で SN材 C種か」(2026-09-15 確認)
- 日本鉄鋼連盟『わかりやすい建築構造用鋼材 Q&A集 SN材シリーズ編』第3版(2008年2月)Q1-10・Q1-17:C種と B種の差は耐ラメラテア性能(厚さ方向特性)
- 日本製鉄 建材ハンドブック「建築構造用圧延鋼材 JIS G 3136 SN材」:C種の使用区分(板厚方向に大きな引張応力を受ける部材)、Z方向絞り値の規定
- 岐阜建築鉄骨交流会 資料「ダイヤフラムの設計サイズ」:鋼板の呼び厚さの並び、裏当て金 9mm と重なり寸法、H形鋼の許容差 ±2mm
■おわりに
板厚と材質の目安は上の資料にもとづく一般論です。物件ごとの板厚・鋼種・出寸法は、設計図書の特記仕様書と監理者の指示が優先します。
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材料特性の確認:JFEスチール「建築構造用鋼材の特徴」。2サイズアップを設計で確認すべき目安と区別し、力の方向と厚板の説明を見直しました。(2026年9月28日改訂)
